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お話し小箱。「好きに動かしてみよー」27 

 

 

 
 
 
 
夕方のラッシュが始まる少し前。
電車から降りた透は、自動改札に向かってゆっくり歩いていた。


自動改札を出たところに暁子サンが立っていた。
「お時間あるかしら?」

 
 
「はあ・・・」
(アップルパイは、遠慮したいなぁ)
 
 
 
彼女にしてはめずらしくカジュアルな服装だった。
よく似合っているものの、<タダモノじゃない感>が
薄れることはなかった。
 
 
 
きれいな色のセーターにしても、
ゆったりとしたデザインのパンツにしても、
透が驚くような値段なのかもしれない。
 
 
 
暁子サンは駅の階段を軽やかに降りていくと、
ファーストフード店に入って行った。
透は驚きながらも後に続いた。
 
 
 
店の奥のテーブルには先生が座っていた。
うつむいて本を読んでいる。
 
 
 
(何で先生 がここに??)
透は驚いて足を止めた。  
 
 
 
「コーラでいいわよね? 先生のところに行ってて」
暁子サンは、それだけ言うと
レジカウンターの方へ行ってしまった。
  
 
 
(そう言われてもなぁ・・・) 
イワイシやケムリが口にしていた
「イヤな感じ」はなかったし、
店に入るまで先生がいることに全く気付かなかったから、
困った事態にはならないだろうと透は判断した。
 
 
 
しかし、オーナーの持っていた石が
全て砂に変わったところを間近で見ている身としては
現時点で先生に会いたくなかった。
 
 
 
ずっと突っ立っているわけにもいかないので、
仕方なく先生が座っているテーブルへ向かって歩いて行くと、
先生が本から顔をあげた。
  
 
 
「寄り道させちゃって悪かったね」
 
 
 
「いや・・その・・・」
 
 
 
「とにかく、座ってよ」
 
 
 
先生に促されて、透は向かい合うイスに腰をおろした。
 
 
 
「・・・なんかまた雰囲気が変わったねぇ」
先生は透をまじまじと見て言った。
 
 
 
「はあ・・・そうでしょうか・・?」
透は足元にカバンを置いて先生の方を見た。
  
 
 
先生は穏やかな表情をしていた。 
(あれ?・・・もやみたいなの、全然見えないなぁ)
先生の首と肩のあたりには、
特におかしな気配はなく、
前回見えた、薄墨色のもやは完全に消えていた。
 
 




 
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「おまたせー」
暁子サンがコーラの入った紙コップを透の前に置いた。
そして、コーヒーの紙コップが載ったトレイをテーブルに置き、
先生の隣のイスに腰を下した。
 
 
 
「・・・あの・・・今日は何で・・・」
透が言いかけると、すぐに先生が答えた。
「イワイシさんに、石の保管用の部屋を作ってもらう話、
 アレ、なくなったから」
 
 
 
「あら、そうなの? 
 わざわざ呼び出すから何かと思ったら」
暁子サンが意外そうに言った。
 
 
 
(?? 暁子サンに話してなかった???
 びっくりしてるみたいだけど、
 ホントに初耳なのかなぁ??)
 
 
 
「オーナーがね、連絡してきて・・・」
先生はそこで言葉を切り、視線を落とした。
そして、手に持っていた本をカバンにしまった。
  
 
 
彼にしては珍しく、
話すべき言葉を探しているように見えた。
「・・その・・・彼の石は・・・ベツモノだったと・・・」
 
 
 
「ベツモノ? 石の博物館にあるものとは違うってこと?」
暁子サンが訊ねると、先生は頷いた。
そして、テーブルの紙コップに手を伸ばし、コーヒーを飲んだ。
 
 
 
「もともと10個くらいしか持っていなかったそうです。
 それが全部、砕けて砂のようになったと・・・
 とても信じられませんが・・・
 
 でも、彼はデタラメを言う人じゃないので・・・
 
 何十年も前のことですが、
 死んだおじいさんの知人から、
 石を見せてもらったことがあると言っていました」
 
 
 
先生は誰とも視線を合せなかったが、
口調は落ち着いていて淡々としていた。
  
 
 
(オーナーは、俺たちが帰った後、
 すぐに先生に電話したのかなぁ?)
 
 
 
「ふーん・・・彼は、石を見たことがあったのね。
 それで? もしかして石が欲しいとか?」
 
 
 
「ええ・・・  
 自分に合う石が欲しいそうです」
 
 
 
「じゃあ、イワイシさんにお願いしないとね」
 
 
 
「ええ・・・彼の場合は、イワイシさんに会わせたいですね」
 
 
 
「どうして?」
 
 
「あの人は、特別なので・・・」
 
 
 
(特別?? ・・・まあ、あの直感は普通じゃないけど)
 
 
 
「イワイシさん、会ってくれるかしらねぇ・・・」



「会ってほしいんですけどね。
 でも、警戒されているかもしれない」
 
 
 
「警戒?
 礼儀正しい態度を保ちつつ、
 簡単に踏み込ませないのは前からでしょ?」
 
 
 
「いや、そういうことじゃなくて・・・」
 
  
 
 
 
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(なんか、先生の感じがいつもと違うなぁ・・・
 困ってるというか、戸惑ってるような感じがする)
 
 
 
「先生が言葉に詰まるなんて珍しいわねぇ」
暁子サンが笑った。
そして少し椅子を引いて身体をずらし、
先生の方を向いた。
 
 
 
「透クンの前で話すことになっちゃうけど・・・
 ご自分で追い払ったんでしょ?」
 
 
 
先生は一瞬目を見開いたが、
すぐに照れくさそうな表情を見せた。
「追い払ったっていうよりは・・その・・・
 
 ・・・最初からお見通しだったんですね」
 
 
 
「お見通し? 
 でも、あれって、普通気づくでしょ?
 透クンもわかってたわよね」
暁子サンは 透の方を見た。 
 
 
 
「あの・・・何のことでしょう?」
 
 
 
「先生が奇妙な状態になってたって
 気づいてたでしょ?」
 
 
 
「はあ・・・奇妙っていうか・・・
 首のまわりにもやみたいなのが見えましたが・・・」
 
 
 
「バッチリ見えてたのねー
 でも今は、そういうのは見えないでしょ?」
 
 
 
「ええ」
 
 
 
透が頷くのを見て、先生はふーっと大きく息をついた。
「やれやれ・・・
 どうやって話そうかと思っていたんですが・・・」
そして、言葉を切ってコーヒーを飲み、しばらく黙っていた。
 
 
  
「わかってたんですね。
 やっぱりというかなんというか・・・
 暁子サンに気づかれないと思っていた私も
 相当マヌケですけど。
 でも、それならそうと言ってくれれば・・・」
 
 
 
「あのね、言えるような雰囲気じゃなかったのよ。
 ・・・冗談じゃなくてね」
暁子サンは真面目な顔で言った。
「本当に、危険だと思ってたわ。
 でも、追い払えたのなら、よかったけど」
 
 
 
「・・・私が追い払ったわけじゃないです。
 ふっといなくなったというか。
 オーナーから電話がかかってくる数時間前でした」
 
 
 
先生はコーヒーの紙コップをもって、
透をちらっと見た。
  
 
 
目が合ったのは一瞬だったが、
先生が「変なモノ」とオーナーの石、
透たち三人を関連付けて考えていることが感じられた。
 
  
 
(やっぱり気づいた・・・なんでわかるんだろう?)
 
 
 
ふと、ポケットに入れていた石のことを思い出した。
動揺が顔に出ませんようにと祈りながら、
透は制服のポケットにさりげなく手を入れると石を握りしめた。
  
 


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石を握るとすぐに、不安な気持ちが消えた。
絶対に大丈夫、ヘンなことにはならないという
確信のようなものがあった。
(大したことじゃない・・・何の証拠もないんだし)
透はコーラの紙コップに手を伸ばし、ゆっくり飲んだ。
 
 
 
先生と暁子サンから探るような視線を感じたが、
さほど気にならなかった。
  
 
 
「・・・そうだったの・・・勝手に消えたのね。
 それで、イワイシさんに警戒されてるっていうのは?」
暁子さんは、先生がさっき言いかけた言葉に話を戻した。
 
 
 
「ああ、それですか・・・
 
 彼は私の状況をほぼ正確に把握していたと思います。
 だから、その・・・自分の好奇心のためだったら、
 後先考えずに突っ走ると思っているかもしれない。
 
 そういうスタイルで情報を取りに来られたら
 厄介だと思ってるんじゃないかと・・・」
 
  
 
「確かにそうねぇ。
 私も驚いたくらいだから。
 先生みたいな人が、あんなことするなんて・・・
 透クンもびっくりしたでしょ?」
 
 
 
「・・・あ・・ そうですねぇ・・・
 ああいうのは、初めて見たので・・・」
 
 
 
「怖いと思った?」
先生が訊ねた。
 
 
 
「怖いというよりは、
 不思議とか奇妙とか・・・そういう感じでした」
 
 
 
「そうか・・・」
先生は溜息をついた。  
 
 
 
『石の博物館の石は、ある意味“遺品”だからね・・・』
 
 
 
透は、先生が言っていた言葉を、不意に思い出した。
(どうしてそこまで思い入れがあるんだろう??
 石って、そんなに特別なものなのか・・・)
  


「本当にイワイシさんとオーナーを会わせたいの?
 私たちが仲介するという約束で、
 イワイシさんに石を用意してもらってるのに・・・
 
 先生がオーナーのリクエストを聞けば十分だと思うけど。
 オーナーが特別だとしても、
 先生はそのことをよくわかっているんだから、
 イワイシさんに伝えることはできるでしょ?」
 
 
 
(イワイシは暁子サンにオーナーに会ったことを
 知らせたのかな・・・
 もう一回会うことになりそうだと思ったけど、
 どうなるかな?)
 
 
 
「そうなんですけどね・・・
 
 私の好奇心については
 よくご存じだと思いますから話しますけど、
 オーナーは、死んだおじいさんを
 知っているんです。
 知り合いとかじゃないし、
 話をしたわけでもないようですが。
 
 ・・・だから、イワイシさんに会わせてみたい。
 透くんにもね」
 
 
 
「オーナーの反応が見たいってこと?」
暁子サンの問いかけに、先生は無言で頷いた。  
  
 
 
「・・・僕とかイワイシさんが、
 死んだおじいさんに似ているって思う人を増やして 
 それで・・どうするんですか?」
透はふっと思ったことを、そのまま口にしていた。
 
 
 
 

 
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先生はいたずらっぽい表情で言った。
「オーナーが、似ているって判断するかどうかは
 今の段階では、わからないよ。
 透くんは似ていると思うって前提みたいだけど?」
 
 
 
「僕自身は似てるとは思ってないです。
 イワイシさんと僕は、全然似てないですから。 
 ただ、先生からも、華子サンからも、似ているとか、
 そっくりとか言われたことがあるので」
石の効果なのか、からかいを含んだ質問にも
平然と答えることができた。
 
 
 
「・・・わかる人にはわかるっていうか、
 もうちょっと正確に言うと見える人には見えるの。
 よく似てる部分がね ・・・実際、とても似てるわ」
暁子サンが透をじっと見て言った。
 
 
 
「・・自分では、わからないです」
透の脳裏に、先生が撮った写真が浮かんだ。
ケムリが見せてくれたイメージ。
イワイシと透は実によく似ていた。
 
 
 
(あの写真では、そっくりだった・・・
 イワイシはなんて言ったんだっけ?)
 
 
 
>「ハシバも気になるのかよー
> ・・・説明しにくいんだよな。
> あの作業の影響なんだけど、それじゃ納得できない?
> 実際に顔のツクリが変わってたわけじゃないよ。
 
> 先生が撮ったからああなったけど、
> 普通の人が撮ったら、普通に写るんじゃないかなぁ。
> 白っぽく写ってたのも、先生が撮ったから だよ。
 
> 正確にいえば、先生だから、見えたわけで、
> 普通の人は、ハシバの印象の変化も、
> 身体が白っぽくなっていたのもわからないはず」
 
 
イワイシが話していた時の様子が
ハッキリ見えた気がした。
  
 
 
(作業の影響って言ってたけど・・・
 影響って、どういうことなんだろう??)
 
 
 
「どうかした?」
透が考え込んでいるように見えたのか、
暁子サンが声をかけた。
 
 
 
「・・いえ・・何でもないです。
 あの・・・イワイシさんと、どこが似てるんですか?」
  
 
 
「眼・・・眼がね、ほんとによく似てるのよ」
 
 
 
(オーナーも眼が似てるって言ってたなぁ)
 
 
 
「でも、色も形も全然違うのに・・・」
 
 
 
「見た目の話じゃないの。
 見えなくても、わかることってたくさんあるわよね?
 花の香りなんて、目には見えないけど、
 ハッキリ感じられるわ。
 ある場所の空気が居心地いいか悪いかだって、
 全く見えないけど、ちゃんとわかるわよね?」
 
 
 
「そういう感じのことなんですか?」
 
 
 
「そうよ。
 ただし、“そういう感じのこと”のうち、
 とても繊細で、わかる人にしかわからないこと」
 
 
 
「華子サンは、そういう感じのことがわかる人なんですか?」
 
 
 
透の質問に暁子サンはケラケラ笑った。
「彼女はどうかしらね。
 ダンナさんへの愛が生み出した力かもね」
 
 
 
「愛ですか・・・あのレベルまで行くと、
 執着かもしれませんよ。 
 石の博物館の石まで、支配していますからね」 
先生は抑揚のない 低い声で言った。 
  
 
 
「石の博物館は、彼女が正当な所有者よ」
 
 
 
「もちろん、そうです。
 でも、あれほど貴重な石に対して、
 あの人は感傷的な思い出しか持ち合わせていない。
 意味も価値も全く分かっていない・・・」
 
 
 
先生の肩のあたりから、どす黒い煙のようなものが
吹きあがるのが見えた。
 
 
  
 

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透のポケットの中の石が一瞬で熱を帯びた。
ポケットの布越しでも、熱さが感じられた。
 
 
 
黒い煙のようなものは、空中の一点に
吸い込まれるようにして消えてしまった。
 
 
暁子サンは、驚いた表情で透を見た。
「あなた、何をしたの?」
  
 
 
「は? 僕は何も・・・」
 
 
 
先生は硬い表情で正面の壁を見つめていた。
暁子サンは先生の様子から異変を感じたらしく、
心配そうに声をかけた。 
「大丈夫? お水を持ってきましょうか?」
 
 
 
「・・・え?・・・ああ・・大丈夫ですよ?
 もしかして、私の顔色、悪いですか?」
先生はきょとんとして、暁子サンの顔を見た。
彼女の表情と、場の雰囲気から気まずいものを感じたようで、
「・・何か、ありましたか?」
と訊ねた。
 
 
 
「いいえ。私の気のせいだったみたい」
暁子サンはにっこり笑って答えると、コーヒーを飲んだ。
 
 
 
「そうですか・・ええと、何を話していたんでしたっけ。
 あ、オーナーに会ってもらえないか、
 イワイシさんにお願いしてみたいという話だった・・・
 やっぱ、ダメですかねぇ?」
先生の人懐っこい笑顔に、暁子サンは苦笑した。
 
 
 
「・・・どうかしらねぇ。
 もともとのルールからは外れるわよね。
 でも、イワイシさん次第じゃないかしら?
 うまく話を持って行ければ、なんとかなるかも。
 ・・・難しいでしょうけど」
 
 
 
「透くんから話してもらえないかなぁー
 仕事とは別っていうことで。
 イワイシさんと二人で来てもらいたいんだけどな」
気さくな口調だったが、NOは許されない雰囲気があった。
 
 
 
「えー・ ・僕がですか・・・
 まあ、話すだけ話してみますけど・・・」
透が気の進まない返事をすると、暁子サンが口をはさんだ。 
 
 
 
「年上だからって、いじめちゃだめよ。
 先生の押しは強すぎるわ。
 
 透クン、ダメモトで話してみてもいいけど、
 先生の好奇心に付き合う必要はないんだからね。
 イワイシさんが断ったとしても、
 それは当然のことなんだし、気にしなくていいのよ」
 
 
 
「はあ・・・」
 
 
 
「先生もそういうリクエストをするからには、
 透クンが話しやすいように
 何か名目を用意してあげないと。
 
 たとえば、こういうことをやるから、
 イワイシさんも来ていただきたいみたいな」
 
 
 
「うーん・・・
 改まった大袈裟なことにするつもりは
 ないんですけどねぇ」
 
 
 
「でも、何か理由がないと、透クンも話しにくいわよ」
 
 
 
「じゃあ、おいしい野菜を買いに行くってことで。
 イワイシさん、料理が趣味なんだろ?」
先生は透を見て言った。
 
 
 
「ええ・・まあ・・・」
 
 
 
「クルマは僕が出すから、
 透クンもイワイシさんも都合がいい場所まで
 迎えに行くよ。
 今週末でも来週でもいいし。
 早いほうがいいけどね」 
 
 
 
先生はイワイシが来ることを全く疑っていない様子なので、
透は気が重くなった。 
 
 
 
 
 

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「で、何? 
 またオーナーの家に行くってこと?」
電話越しに聞こえてくるイワイシの声は
面白がっているようだった。
 
 
 
「オーナーの家とは言ってないよ」
 
 
 
「言ってないけど、先生のことだから、行く気満々だよ。
 オーナーと彼の石と俺達を結びつけてるだろうし」 
 
 
 
「・・・なんでわかるんだ?」
 
 
 
「なんとなく」
イワイシは短く答えた。 
 
(なんとなくって・・きっと自分でもわからないんだろうな。
 でも、いろいろわかっちゃうってどういう気分なんだろう?) 
 
 
 
暁子サンたちと別れてから、
透は家に向かって歩いていたが、
途中にある公園に入って行って、
ベンチに腰をおろした。
 
 
 
「それと・・・お守りの石で何かやったか?」
 
 
 
「俺は何もしてないけど」
 
 
 
「ああそうか。
 ハシバにとっては、石が勝手に反応したように見えるんだな」
 
 
 
「見えるんじゃなくて、実際そうだった。
 ポケットの中に入れてたんだけど、急に熱くなって・・・」
先生の肩から吹きあがった黒い煙、暁子サンの驚いた表情が
脳裏をよぎった。
右の肩が カッと熱くなり、何かが抜けていくような
感じがした。
 
 
 
「コントロールしにくいのかな?
 こちらとしてはありがたいけど」
  
 
 
「あ・・今の白い光かー
 また勝手に送られちゃった」
 
 
 
「口で説明するより早いって、判断したのかな」
 
 
 
「誰が?」
 
 
 
「ハシバが・・・自覚はないだろうけど」
 
 
 
「ああ。この間と同じだ。
 肩が熱くなって、知らないうちに光を送ってる・・・
 説明するつもりだったからいいんだけど。
 
 で、お守りの石は何をやったんだ?」
 
 
 
「完全に追い払ったってところかな。
 先生に憑依してた変なモノ・・・
 ソイツは、暗い感情っていうか 、
 そういう感じのものに共鳴するらしい」
 
 
 
「この間の気持ち悪い石みたいな?」
 
 
 
「ああ・・・あんな感じかな。
 実際はちょっと違うんだけどね。
 変なモノは、先生からいったん離れたみたいなんだけど、
 まだ先生の心というか気持ち的に、
 石に対する執着とか、
 ばあちゃんに対する恨み・・って言ったら大袈裟だけど
 そういうものが残ってたんだろうね。
 
 だから、どういう形だったのかわからないけど
 つながりが残っていたんだと思う」
 
 
 
「それが切れたってこと?」
 
 
 
「そういうことになるなー
 切れたっていうより、残っていたものを
 完全に一掃しちゃったっていうか。
 変なモノに関しては、先生の記憶も、
 あいまいになっている感じがする・・・
 ホントにそうなのか、よくわかんないけど」
  
 
 
「暁子サンがびっくりしてたのはそのせい? 」
 
 
 
「そうだね。
 ハシバがやったように見えるからなぁ。
 そのうち、ご質問が来るかもしれないな」
 
 
 
「・・・答えられないよ」
 
 
「わかりませんって言えばいい。
 気にしなくていいよ」
 
 
 
「気にしなくていいって言われてもなぁ・・・
 自分では何も分かってないのは、そうなんだけど。
 ・・・それで、先生とかオーナーに会うのか?
 今週末か来週末とか言ってたな」
 
 
 
「断る理由を考えるより会うほうがよさそうだなー」
 
 
 
「でも、先生と一緒なら、“イワイシさん”として
 会うことになるけど、いいのか?」
 
 
「ああ。
 オーナーは、初対面にするって約束してたし。
 あの人なら、違和感持たれないように
 うまくやるだろ。
 先生は何か嗅ぎつけるかもしれないけど」
 
 
 
 
 
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(結局、今週末に行くことになっちゃったけど・・・
 ホントに大丈夫なのかなぁ。
 
 イワイシは、イワイシさんとしてだから、
 初対面のフリをするのは簡単だろうけど、
 俺はうまくできるかどうか、自信ない・・・)
 
 
 
イワイシとの電話が終わった後も、透はベンチに座っていた。
 
 
 
(雰囲気変わったとか、イワイシに似てるとか・・・
 実際のところはどうなんだろ?
 自分では変わったとは思わないし、
 家でも学校でも、何も言われてないけどなぁ)
 
 
 
「今から帰るところ?」
後ろから声がした。
透が驚いて振り返るとケムリがいた。
 
 
 
「いつの間に・・・」
 
 
 
「あれ??
 気づいてなかった?」

ケムリは透の隣に腰をおろした。
 
 
 
「暁子サンと先生に会って、
 そのあと、イワイシと電話で話したんだろ?」
 
 
 
「はあ・・・」
(暁子サンたちに会ったこと、何で知ってるんだ?)
 
 
 
「めんどくさくないか?」
 
 
 
「え?」
 
 
 
「わけわかんない奴等に振り回されてさ」
 
 
 
「あー・・・そうですねぇ・・
 確かに振り回されてるかもしれないけど、
 面白いなと思う部分もあるので・・・」
 
 
 
「無理に付き合わなくてもいいんだよ?」
 
 
 
「無理はしてないです。
 暁子サンや先生みたいなオトナの人とは
 話す機会がないから、面白いし」
 
 
 
それ を聞いたケムリは笑い出した。
「あんなオトナがゴロゴロいたら困るよ。
 特に先生みたいなのが大勢いたら大迷惑」
 
 
 
「先生がおかしくなるのは、
 石に関することだけだと思いますよ」
 
 
 
「そうかもしれないけど・・・
 でも、ハシバくんはその部分だけで関わってるわけだし」
  
 
 
「確かにそうなんですけど・・・
 あの人が怖いと思うこともあるけど、
 面白くて、いい人だと思うこともあるんです」
 
 
 
「ふーん・・・」 
 
 
 
「先生は・・・悪い人じゃないと思います。
 あまりよく知らないんですけど、
 たぶん、仕事とかの面では、スゴイ人なんだと思うし」
 
 
 
「病的な好奇心さえなければ、
 まっとうな人なんだろうけど・・・
 でも、あの部分がなくなったら、
 先生らしさもなくなっちゃうかもしれないな」
 
 
 
「あの・・・週末に、先生とイワイシと3人で
 オーナーのところに行くことになったんです」
 
 
 
「そうなると思ったけど、ずいぶん早いね」
 
 
 
「イワイシは“イワイシさん”だからいいけど、
 俺は・・・オーナーとちゃんと会話できるかどうか心配です」
 
 
 
「大丈夫だと思うよ。
 あまり話さなくても済むと思うし」
 
 
 
「そうだといいんですけど・・・」
 
 
 
「イワイシは、うまくやるよ。
 フツーにしてれば大丈夫。
 
 オーナーは・・・
 本人にどのくらい自覚があるかどうかわからないけど、
 いろいろできる人だし、ものすごく察しがいいいから、
 気まずい雰囲気にはならないはず」
 
 
 
「確かに、タダモノじゃない感じはしますけど、
 どうしていろいろわかるんですか?」
 
 
 
「・・・わかってるわけじゃないよ。
 ただ、そういう気がするだけ。
 ハシバくんだって、何の根拠がなくても、
 もっともらしい説明が全然浮かばなくても、
 こうなってるはずだって強く感じること、あるだろ?」
 
 
 
「ええ・・まあ」
透は曖昧に頷いた。
 
 
 
「イワイシにも言われてると思うけど・・・
 
 根拠になるものが全然ないのにもかかわらず、
 こういうことなんじゃないかなって思ったら、
 それを否定するなよ。
 
 実際、ハシバくんの場合は、
 当たってることの方が多いんだし、
 そういう気がするっていうのを、
 信用していれば、もっと精度が上がるはずだから」
 
 
  

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