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お話し小箱。「好きに動かしてみよー」25 

 



  
 
光崎さんがお茶を淹れて
「ごゆっくり」
と言って静かに出ていくと、
ケムリが呟いた。
「我々が得ている情報については、
 お見通しってことか。
 事前に申告してくれるだけありがたいけど」
  
 
 
「嫌な感じじゃないのは確か・・・
 でも、なんか、こういう感じ・・どこかで・・・」
イワイシは眼を閉じた。
「へんだな・・何か知ってる感じがする」
 
 
 
「光崎さんにメッセージを送っているっていう存在って
 金色の光と関係あるみたいだ。
 暁子サンから預かった石の作業をした後の・・・」
透が言いかけた時、右の肩が突然熱くなった。
そこから白い光がイワイシとケムリに流れて行った。
 
 
 
「ああ、俺がハシバくんに見せたイメージか・・・
 
 無害化の作業が終わった後、
 イワイシがいきなり眠りこんだときだ」
 
 
 
ケムリの言葉に、イワイシは複雑な表情を見せた。
「・・・これが来てたのか・・・」
瞳の色が変化し、紫色っぽくなっていった。 
  
 
 
透とケムリが自分を見ているのに気がつくと 
あわてて目を伏せて俯いた。 
 
  
 
「この光が何なのか知ってるんだな?」
ケムリが尋ねると、イワイシは俯いたまま
「知ってるって言えるほどのレベルじゃないけど・・・」
と呟いた。 
そして、何かを追い払うようにして頭を振ると顔をあげた。
瞳の色は元に戻っていた。
「とりあえず、このご馳走 を食っちまおうぜ」
と言うと、すごい勢いで食べはじめた。 
 
 
 
 
* * * * * * 
 
 
 
テーブルの上はきれいに片づけられ、
よい香りのコーヒーが出された。
 
 
 
「さてと・・・」
光崎さんも席に着いた。
 
 
 
「私が不思議な声を聞くって話は聞いているわよね。
 そういう声が伝えてきたメッセージって
 アヤシイから信用できないって思うかしら?」
 
 
 
「いえ・・・そんなことは・・・」
イワイシが答えると、光崎さんは、透とケムリの方を見た。
答えを聞きたいようだった。
 
 
 
「・・・メッセージの内容次第では、
 オカシイと思うかもしれません」
透が答えると、すぐにケムリが続いた。 
 
「僕もそうです。
 内容で判断します 」
 
 
 
 
「そうね・・・それが普通よね。
 じゃあ、メッセージを聞くこと自体には抵抗ないわね?」
 
 
 
3人が頷くのを見て、光崎さんは言葉をつづけた。
 
 
 
「ここに来てもらったのは・・・
 暁子から、連絡があったからなの。
 3人に伝えるメッセージがあるはずだからって。
 ・・・って言っても、意味がわからないわよね。
 
 私にメッセージを送ってくる存在のこと・・・
 ええと・・・こういう話は、大丈夫よね?
 ヒトによってはこの段階で、目がテンになるみたいだけど」
光崎さんは言葉を切ってコーヒーを飲んだ。
 
 
 
「コーヒー、冷めないうちにどうぞ。
  
 ええと・・
 そうそう、私にメッセージを送ってくる存在のこと、
 あの子はなんとなく感じられるみたいなのよね。
 具体的な内容はわからないにしても、
 今回のように、あなた方宛のメッセージがくるはずだ、みたいな。
  
 それで・・・信用してくれるかどうかわからないけど、
 今回のメッセージには私は関与しないことになるわ。
 私が伝える形になるんだけど、私には何もわからないの。
 
 こういうことって、時々あるのよ。
 私が知る必要はないけど、
 相手には伝えなければいけないってね。
 
 完全にトランス状態になるわけじゃないけど、
 情報が私を通過していくだけなの。
 
 つまり、私が伝えた情報がどういう内容だったのか、
 私にはわからない。
 だから、あの子に話すこともないわ」
 
 
 
  


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「暁子サンは、どういうつもりで・・・
 
 その・・・僕たちが聞くべきメッセージがあるから、
 とにかくそれを聞いてきなさいってことなんでしょうか?」
イワイシが質問した。
 
 
 
「そういうことになるわね。
 
 自分には関係ないことだけど、
 大事なことだから、絶対に聞いておくべきだって
 感じたんでしょうね。
 こういうのって、イマドキの人にとっては、
 お節介って感じるかもしれないわね。
 あなた方は、面倒見てあげなきゃならないような、
 小さいコドモじゃないんだし。
 
 でも、あの子ってね、昔からものすごく世話好きなのよ。
 誰に対してもってわけじゃないんだけど、
 自分のアンテナにひっかかった人に対しては、
 身内みたいな感覚を持つみたい」
 

 
光崎さんはコーヒーを飲んで、窓の外を見た。
そして、ふーっとため息をついた。 
 
 
 
「正直なところ、私にとっては、
 メッセージなんて、別にどうでもいいのよ。 
 だって、あなた方は独自の感覚を持っているんですもの。

 実際にお会いしてみて、アレコレ言うのは、
 かえって失礼なんじゃないかって思ったくらいよ。
 
 ただ、不安とか迷いが強くなると、
 脇道に逸れていっちゃうことがあるみたいだけどね。
 
 でも、最終的には、自分の心の声に従うはずだって
 私は思ってるんだけど、あの子は違うみたい。
 脇道に逸れることを心配してるみたいよ。
 
 その気持ちは、わからなくもないけど・・・
 
 聞きたいなら伝えるわ。
 
 あら?
 ・・・あ、ちょっと待ってね」
 
 
光崎さんは、そう言うと、目を閉じて、
胸の前で両手の手のひらを合わせた。
 
 
 
意識的に呼吸を深めているのがわかる。
しばらくゆったりした呼吸を繰り返した後、
手を膝の上におろして、目を開けた。
 
 
 
「メッセージを聞いてくれるのなら、
 言葉じゃなくて、一人ずつイメージを送りたいって・・・
 
 こんなことを言ってくるなんて初めてだわ。
 
 でも、だからって、受け取らなきゃいけないってわけじゃないのよ。
 さっきも言ったけど、私は必要ないって思ってるから」 
 
 
 
「送ってください」
光崎さんが言葉を切るとすぐにイワイシが言った。
 
 
 
「わかったわ。
 あとのお二人は?」
 
 
 
「お願いします」
ケムリが言うと、光崎さんは頷き、透の方を見た。
 
 
 
「あ、じゃあ、僕も・・お願いします」
透が慌てて返事をするのを見て、光崎さんは笑った。
 
 
 
「無理しなくていいのよ。
 心の声が、いらないって言ってたら、
 あなたには必要ない情報なんだから」
 
 
 
「いる、いらないとかじゃなくて、
 どういうものなのか、興味があるんです」
 
 
 
「ふうん・・そうなの・・・
 それも面白いわね。
 じゃあ、これからお返事してもらった順に
 3人に送るわね」
 
 
 
その直後、光崎さんの肩のあたりから
白い光がイワイシの肩に流れた。
その残像が消えないうちに、
次の光の筋がケムリに流れ、
続いて白い光は透の肩にも流れてきた。


 

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透の脳裏にイメージが浮かんだのは、一瞬だった。
 
 
 
「こういうものが見えた」というよりは、
「こういうことがわかった」という感じだった。
 
 
イワイシっぽくないイワイシが二人。
 
・・・イワイシが二人??
ケムリが話していた双子の兄貴・・・?
 
 
 
二人とも透が知っているイワイシとは
違った雰囲気に見えたが、
そのうちの一人は、顔立ちはよく似ていても、
イワイシではないことがハッキリ感じられた。
 
 
 
黒い服を着たケムリもいた。
 
この3人の前に自分が立っているのか、
それとも立っている自分を見ているのか、
イマイチわからなかったが、
自分もその場所にいるように感じられた。
 
 
 
なぜか、白いレジ袋を持っていて、
中には水のペットボトルが4本入っているのが
わかっていた。
 
 
 
それを目の前にいる3人に渡さなければならず、
残りの1本は、自分が飲むことになっていた。
 
 
 
水のペットボトルには、
何か特別な意味があるような気がしてならなかった。
 
 
一瞬の映像で、どうしてここまでわかるんだろう・・?
とても不思議だった。
 
 
 
 
「謎解きはご自分でどうぞ」
光崎さんの笑いを含んだ声が聞こえた。
 
 
 
イメージの残像を追っていた透は、
<現在>に引き戻された。
 
 
  
「あなた方がどんなイメージを受取ったかは
 わからないけど・・・
 何か、不思議な絵みたいなのを見せられたんじゃないかしら?」 
  
  
  
ケムリは光崎さんの言葉に頷いたが、 
イワイシはコーヒーカップを見詰めたままだった。
 
 
 
「見ない方がよかった?」
光崎さんが尋ねると、イワイシは顔をあげた。
 
 
 
「・・・いいえ。
 どうもありがとうございまし た」
感情を押し殺したような声だった。
 
 
 
光崎さんは、イワイシをじっと見た。
「あなたは・・・もっと幸せになっていいと思うのよ
 初めて見た時、そういう印象を持ったわ」   
 
 
 
「そうですか・・
 
 でも、何が起こるか分からないこの世界で、
 毎日無事に生きているだけで、
 十分幸せだと思いますが・・・
 
 長い間、無難に過ごしていると、
 それが当たり前に思えてきて、
 明日も明後日も、一年後も、
 今日みたいな日が続くのが前提になってしまうけど、
 本当はそうじゃない。
 
 だから、一日を無事に過ごせただけでも、
 ラッキーっていうか、
 すっごく幸せなことなんじゃないかと思います」
 
 
 
「・・・確かにその通りだと思うわ。
 でも・・・でもね、
 私が言いたいこと、あなたはわかってるはずよ。
 暁子があなたにアレコレ言いたがるのは、
 私と同じことを考えてるからじゃないかしら。
  
 あの子と話したわけじゃないから、
 単なる直感だけどね」
 
 
 
 
  

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光崎さんの家を辞去して、クルマに戻るまで
イワイシは必要最低限のことしか話さなかった。
 
 
 
心ここにあらずといった感じで、
ふっと消えてしまっても
おかしくないような雰囲気だった。
 
 
 
クルマの前まで来ると、
ケムリは周囲の気配を確認するように
さっと視線を巡らせてからイワイシに声をかけた。
「おい・・・大丈夫かよ」
  
  
 
イワイシはケムリを睨んだ。 
「どういう返事をすれば安心する?」
それだけ言うと、運転席に座った。 
 
 
 
ケムリは困ったような顔をして透を見た。
透は苦笑いを返すしかなかった。
 
 
 
(・・・イワイシは何を見たんだろう?
 ケムリはイワイシが何を見たのか 、
 見当が付いてるみたいだ。
 イワイシも、それがわかってるっぽい)
 
 
 
「早く乗れよ」
イワイシの声はイラついているようだった。
ケムリと透は急いでクルマに乗り込んだ。
 
 
 
「先生のことは心配なさそう・・・っていうか、
 なんとかなる・・・大変な事にはならない」
イワイシはそっけない口調で言った。
 
 
 
「先生のことって・・
 あのヒョウイしているとかってやつ?」
透は、ぜんぜん違う話題になったことに戸惑いながらも、
話しやすい内容だったのですぐに質問した。 
 
   
 
「ああ。
 さっきの道の駅で、境界がどうの って言っただろ?
 あれが・・・その、どういう説明ならわかるかなぁ」
イワイシはクルマをバックさせて、方向を変えると、
光崎さんの家の私道を出て、一本道に入った。
 
 
 
「あの境界ってさ・・・信じられないだろうし、
 信じてもらおうとも思ってないけど、
 <違う世界>との接点みたいな場所なんだ」
 
 
「確かに、すっげーヘンな感じがしたな。
 何でわかった?」
ケムリが訊いた。
 
 
 
「・・・企業秘密。
 
 やっぱ、暁子サンはタダモノじゃない。
 先生が無意識に頼ってるのはわかる気がする。
 ・・・・無意識じゃなさそうだな。
 
 先生もかなり見えてるはずだから、
 暁子サンの力を理解してて、
 ・・・つまり、何かあっても
 絶対にどうにかしてくれるって踏んだ上で
 変なモノを憑依させたんだろ」
イワイシはいつもの状態に戻ったようだった。  
 
 
 
「変なモノって、
 暁子サンは、直接かかわりたくなかったんじゃないかな。
 ・・・実際そうなのかわからないけど・・・」
透が言うと、すぐにイワイシが応えた。 
 
 
 
「そうだと思う。
 自分が出ていくとこじれるとか、
 出ていくような話じゃないとかって理由じゃなくて、
 波風立てずに解決できると思ったからじゃないかな。
 
 つまり・・・ええと・・・
 こういう言い方ってなんだかなぁって思うけどさ、
 その・・なんていうのかなぁ・・」
イワイシは言葉に詰まって少し考え込んだ。
 
 
 
「お前が言葉に詰まる時ってさ、
 だいたい、自分に関する事なんだよな。
 今回もそうだろ。
 
 たぶん、暁子サンは、イワイシを見せれば、
 奴っていうか、ヤツラは引くって思ったんだろ。
 これだけの力を持った存在が、
 センセイの近くにいるんだから、
 好き勝手はできないぞって・・・
 
 ハシバくんだって、暁子サンがかかわりたくないって
 感じてることに気づいてるんだから、
 ある程度は想像してただろ?」
 
 
 
「うーん・・・そこまでは、わからないです。
 あの、奴って、変なモノのことですよね?
 ヤツラって何ですか?
 変なモノの仲間?」
 
 
 
「たぶんね。
 俺もよくわかってないけど・・
 イワイシはわかってるんじゃないかな?」
 
 
イワイシは、ケムリの話を聞いていなかったかのように
つぶやいた。 
「今、ふっと思ったんだけど・・・
 センセイはわりと早く元に戻るっていうか、
 変なモノとオサラバするんじゃないかな」 
 
 
 
 
 
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車内はずっと静かな状態が続いていた。
雨はすっかり上がり、雲の切れ間から
日の光が射してきた。
 
 
 
一本道は、幹線道路につながるT字路の交差点で終わっていた。
信号待ちしてから、クルマは左折して、
片側三車線の広い道に入った。
 
 
 
幹線道路を30分ほど走ったところで、
分岐する細い道に出て、
少しさびれた雰囲気の市街地しばらく走ると
また田圃の中の一本道に入って行った。
 
 
「あの大きな家がそうらしいな」
イワイシが興味なさそうに言った。
 
 
 
「オーナーの家を見たから、そこの空き地でUターンして帰るか」
イワイシは、車輪の跡がたくさんついている
小さな原っぱのようなところにクルマをとめた。
 
 
 
「帰るって本気で言ってるのか?」
透がびっくりして聞くと、イワイシは
「ああ・・・でも、散歩くらいはしておくか」
と言って、エンジンを切って、シートベルトを外すと
さっさとクルマを降りた。
 
 
 
「ご機嫌がいいんだか悪いんだか・・・
 腫物に触るような扱いをするつもりはないけどさ、
 いつも強気でマイペースな奴っていいよな。
 俺は気遣いのヒトだから、たいてい貧乏クジ引いてる」
ケムリがつぶやいた。
 
 
  
それを聞いて、透は笑ってしまった。
 
 
 
「何がおかしいんだよ。
 ま、いいけどさ・・・降りようぜ」
 
 
 
 
外に出た瞬間、透は視線を感じた。
・・・誰かに見られてる??
辺りをぐるっと見回したところで、イワイシが言った。
「・・・見られてる感じがするよな」
 
 
 
「ホントだ・・・どこから見てるんだ?」
ケムリも不思議そうに周囲を見回した。
  
 
 
近くを流れている用水路の脇には、
まばらに低い木が生えているものの、
人が隠れられるようなスペースはない。
 
 
 
「こっちの方かな?」
イワイシは用水路に沿って歩きだした。
透とケムリもあとに続いた。
 
 
 
「ここみたいだな・・・」
イワイシは上着のポケットから
化繊の手袋を出して両手にはめると、雑草のしげみをかき分けた。
 
 
 
「これに呼ばれたのかな?」
透とケムリがイワイシの肩越しにのぞくと、
苔むした小型の石像が見えた。
 
 
 
頭部らしき部分と胴体に見える部分があるので、
<人型>と言えなくもなかったが、
別のものかもしれなかった。
 
 
どこかで目にしたことのある形ではなかった。
お地蔵さんとか石仏などといった感じはなく、
遠い昔に、誰かが手を加えて作った形であることは
間違いないと思われたが、
親しみとか懐かしさみたいなものは、一切感なかった。
 
 
(どこか、ぜんぜん違う世界から運ばれてきて、
 ポンってここに置かれたみたいだな)
 
 
 
「誰か来るぞ」
ケムリが低い声で言った。
  
 
 
透が振り返ると、オーナーの家の方から、
こちらに向かってくる人影が見えた。
 
 
 
 
 
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「・・・どうする?」
透は不安になった。
何で誰も気づかなかったんだろう?
イワイシやケムリだったら、
すぐに何かの気配に感づいてもおかしくないのに。
 
  
 
「どうするって・・・
 別に悪いことしてるわけじゃないし、
 逃げる方がヘンだろ。
 クルマ停めた場所が私有地だったら、マズイけど」
 
 
 
「なんで誰も気がつかないんだよ」
 
 
 
「なんでって・・・
 ハシバだって気づいてなかったじゃないか。
 気がつかなかったってことは、
 特に危険はないってことだろ」
 
 
 
低い声で話しているうちに、
あっという間に人影は近くに来ていた。
おじいさんだった。
笑っているようだった。 
 
 
 
「よくそれを見つけたねぇ」
張りのある声。
 
 
 
背が高くて背筋がピンと伸びていて、
体の動きがキレイだった。
長年何か武道をやっている人のようだった。
 
  
 
髪は真白で、額や眼尻にはしわが刻まれていたが、
表情は明るく、生き生きしていて、
強い意志を感じさせる眼をしていた。 
 
  
びしっとしたスーツや、タキシードを着たら、
タダモノではない雰囲気を漂わせるに違いない。 
 
  
 
「・・・彼がオーナー・・・」
イワイシがさらに声を落して言った。
そして、石像から離れて、手袋を外した。 
 
 
 
おじいさんの方が透より背が高そうだった。
(クセのある人物って言ってたよな・・・
 クセっていうか威圧感の方が強いかも)
 
 
 
「こんにちは。
 この石像について、何かご存じなんですか?」
おじいさんが数メートルの距離まで近づいてきたところで、
イワイシが話しかけた。
 
 
 
おじいさんはイワイシを見て、
一瞬、アレ?と表情を見せたが、すぐに笑顔に戻った。
「雑草の中に埋もれてたのに・・・
 どうして気がついたのかな?」
  
 

「あの・・
 誰かに見られているような感じがしたので」
 
 
 
「ふうん・・・そちらのお二人さんは?
 彼が言うまで気がつかなかった?」
 
 
 
「視線みたいなものは感じましたけど・・・
 こういう石像があるとは思いませんでした」
透が言うと、ケムリも頷いた。
 
 
 
「じゃあ、3人とも何か感じたんだね」
 
 
 
「はい」
 
 
 
「・・・初対面でこういう話をすると、
 ヘンなおじいさんだと思われるかもしれないが・・・
 
 まあ、きみたちは、この石像に気づいたわけだから、
 ある程度は、奇妙な話に理解があるんじゃないかな?」
おじいさんは、3人を見渡した。
そして、懐かしそうに目を細めた。  
  
 
「3人そろって、あのひとに似てるなぁ・・・
 もっとも、直接話したことはないから
 彼は私を知らないかもしれないが。
 ・・・失礼。
 相当アタマがおかしいと思われても仕方ないな」
 
 
 
「あのひとって、どなたかお知り合いの方ですか?」
イワイシが質問すると、おじいさんは深く頷いた。
 
 
「目立つっていうか、際立った存在感のある人だった。
 どこがどうって説明するのは難しい。
 特にきみとこっちの彼がよく似てる。
 ・・・目の印象が似てるのかな」
おじいさんは、イワイシと透を見て言った。 
 
 
 
それから視線を遠くへ逸らし、深いため息をついた。 
気持ちを切り替えたのか、少し表情が変わった。  
「もしかして、わざわざコレを見にきたのかい?」
 
 
 
「いえ、そういうわけではありません。
 たまたま通りかかっただけで・・・
 
 あの、そこの空き地に
 クルマを停めてしまったのですが・・・」
イワイシが申し訳なさそうに言うと、おじいさんは笑った。
 
 
 
「ああ、別にいいよ。
 ウチの土地だけど、
 ふだんから駐車場っぽい使い方してるから。
 さっき停めたばっかりなのは知ってるし。
 この石像に気づいて、見たくなったとか、
 そんな理由だろ?」 
 
 
  
「はい・・・すみません」
 
 
「見て、どう思った?
 どんなことを感じた?」
おじいさんは興味深そうに3人の反応を待っていた。

 
 
 
 
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