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お話し小箱。「好きに動かしてみよー」23 

 


 
 
イワイシは白いレジ袋をぶら下げたまま
どんどん歩いて行った。
 
 
 
駐車場の外に出ると、
まばらに草が生えている原っぱが広がっていた。
これが緩衝地帯のようになっていて、
その先には田圃や畑があった。
 
 
 
「目印になりそうなものが全然ないけど、
 わかるのか?」
ケムリが訪ねると、イワイシは振り返った。
 
 
 
「なんだよ、あんた、見えてないのか?」
 
 
 
呆れたような口調に、ケムリはちょっとムッとしたようだった。
「見えてねーよ」
 
 
 
「おかしいな。
 あんたに見えないわけがないんだけど」
 
 
 
「あの・・・3人で行動しろってことじゃないのか?」
透は緑の髪の女の人のことをふっと思い出して言った。
 
 
 
「ああ・・・そっか。
 そういうことかもしれないな」
 
 
 
「どこに何が見えてるんだ?」
 
 
 
「目印がないから、説明のしようがないなー
 とりあえず近くまで行こう」
 
 
 
原っぱの途中から、かなりボコボコではあるものの
とりあえず舗装してある細い道が田圃の間に延びていた。 
  
 
 
その道をしばらく歩くと、用水路があった。
幅はやや狭いが、それなりに水量があり、
勢いよく水が流れていた。
 
 
 
「ちょうどこのあたりなのか・・・」
 
 
 
「何が?」
 
 
 
「キョウカイ」
 
 
 
「ふーん・・・全然わかんないなぁ。
 何も感じない。
 この用水路、結構新しいと思うんだけどな」
  
 
「水路用のL型ブロック入れたりして、
 ちゃんと整備したのは最近かもしれないけど、
 もっと前からあったのかもしれないな」
  
  
 
「で、キョウカイって何がどうなっているんだ?」
 
 
 
ケムリが尋ねると、
「そうだなぁ・・・どう言ったらいいのかなぁ」
と言って、イワイシは眼を閉じた。
 
 
 
「ところどころで、口を開けてる・・・
 そこから、何かエネルギーみたいなものが
 あふれ出しているっていうか・・・」
 
 
透は水の流れに目を向けた。
線香の煙のような細くて白っぽいものが
ゆらゆらしているのが見えた。
 
 
 
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「お線香の煙みたいなのが、
 イワイシが言ってるエネルギー?」
 
 
 
「・・・そういう風に見えるのか?」
 
 
 
「違うのか?」
 
 
「いや、合ってるも間違ってるもないよ。
 見え方は人それぞれなんだろうし」
 
 
 
「で、お前には、何が見えてるんだ?」
 
 
ケムリが訊ねると、イワイシの肩のあたりが白っぽく光った。
それは帯状になって、ケムリと透に向って流れてきた。 
 
 
 
白い光を受け取った途端、
用水路の水面から、青い噴水のようなものが
吹きあがっているイメージがアタマの中に浮かんだ。
高さは4,50センチくらい。
<ところどころで、口を開けてる>とイワイシが
言ったとおり、青い噴水のようなものは、
ランダムな間隔をあけていくつか吹きあがっていた。
 
 
 
「・・・この青・・・なんか人工的で嫌な感じだなぁ」
透が呟いた。
 
 
 
 
「駐車場から見えたのは、緑っぽい雲みたいな感じで
 結構高いところをふわふわしてたんだ。
 近くに行ったら、こうなってたんだけど」
 
 
 
「吹きあがってる水の高さは大したことないけど、
 波動っていうか・・・なんだかよくわからないものが
 かなり高いところまで広がってるみたいだな・・・
 俺には全然見えてないけど、
 送ってもらったイメージだと、そんな気がする」
ケムリは空を見上げた。
 
 
 
「・・・ヘンだよな」
イワイシも空を見上げた。
瞳の色が紫っぽく変化していた。 
 
 
 
「ヘン? 何が?」
 
 
 
「なんていうかな・・・その・・不自然な感じがする」
 
 
 
「不自然?」
 
 
 
「うーん・・・感じっていうかさ、感覚だから、
 うまく説明できないんだけど。
 コレを使えばわかるのかなぁ?」
 
 
 
イワイシはシャツの首元から
鎖を引っ張りだした。
先端に<魔法使いのおばちゃんの指輪>が
ぶら下がっていた。
イワイシは鎖から指輪を外すと、右手の中指にはめた。 
そのとたん、イワイシの瞳の色は紫から赤に変化した。
 
 
 
「おい・・・どうしたんだ?」
ケムリが声をかけた。
 
 
 
「何が?」
イワイシはちょっと驚いたようだった。
 
 
 
「眼が、赤く光ってる」
 
 
 
「赤? 
 何のサインだろ?
 赤は、今までなかったかもしれないなぁ」
イワイシの口調はのんびりしているものの、
赤い瞳は、鋭い光を放っていて、
何か異常を察知しているようにしか見えなかった。
 

 
 
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「風向きが変わったみたいだな」
イワイシは用水路の水の流れを見つめて言った。
 
 
「風、吹いてる? 感じないけど」
透は周囲を見渡した。
 


「それにしても、その指輪、いろんなことができるんだな。
 どうやって身に着けるかによって効果が変わるのか?
 俺がそれを指にはめたら、
 イワイシが見えてるものが見えるようになるのかな?」
 
 
「いや、ハシバの場合は、この間みたいに、
 何かががっちりプロテクトしてるんだ。
 指輪のゴリヤクは関係ないかもしれない」
 
 
 
「・・・どうもヤバい感じがする。
 ここから離れたほうがよくないか?」
ケムリが言った。
 
 
 
「そういう感じはさっきからあるんだけど
 なんか不自然な気がする。
 
 この場が危険というより、
 誰かっていうか、何かが、
 離れろって警告してるみたいだ。
 ・・・それもかなり強く」
 
 
 
「じゃあ、クルマに戻ろうよ」
不穏な気配はまったく感じられないとはいえ、
ケムリとイワイシの会話を聞いていると、
透は不安になってきた。
 
 
 
「そうすべきなんだろうけど・・・
 誰が何のためにっていうのが
 すっごく気になるなぁ」
 
 
 
「先生の好奇心の強さをからかってたけど、
 お前も同類じゃないか」
 
 
 
「俺はあそこまで向こう見ずじゃねーぞ。
 ・・・危険はないはずなんだ。
 ただし、警告を出してる存在が
 ブチキレたら危ないだろうけど」
 
 
 
その時、白い影が用水路の水面にふっと現れて
強い光を放つとすぐに消えた。
 
 
 
「あ!」 
透は思わず声を上げた。 
 
 
 
イワイシの顔から血の気が一気に引いた。
「・・・戻ろう」
声がひどく掠れていた。
瞳は赤いままだったが、鋭い光は消えていた。
 
 
 
「・・・何が見えたんだ?」
ケムリが尋ねた。
 
 
 
「・・・一番会いたくない奴」
イワイシは吐き捨てるように言った。
 
 

「え?・・・でも・・・」
ケムリが言いかけたのをイワイシは手で制した。
 
 
 
「単なるイメージだ。実体じゃない。
 ・・・奴がいるわけないんだ。
 とにかく離れよう」
 
 
 
イワイシは用水路に背を向けると、
駐車場に向かって歩き出した。
 
 
 

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「ハシバくんには、何か見えたのか?」
ケムリが声を落して透に尋ねた。
 
 
 
「白っぽい影で・・・
 ヒトみたいだったけど、顔はわかりませんでした」
 
 
 
「はっきり見えたのはアイツだけだったのかな」
 
 
 
「いや・・・もともと顔なんて判別できないのかも。
 見る人によって、どうとでも見えるのかもしれません。
 あ、あの、根拠はないです。
 ただそんな気がしただけで・・・」
 
 
 
「ふうん・・・
 でも、実際にそうかもしれないな」
 
 
 
「イワイシが一番会いたくないひとって、
 誰なのか知ってるんですか?」
 
 
 
ケムリは遠ざかるイワイシの背中をちらっと見て、
さらに声を落して言った。
「この間話したけど・・・アイツの兄貴」
 
 
 
「え? でも・・もういないって・・・」
 
  
 
「そう。
 だから、単なるイメージで実体はないって、
 イワイシ自身、言ってただろ?」
 
 
 
「イメージだってわかってるのに、
 あんなに青ざめるなんて・・・」
 
 
 
「まあ、事情が事情だから・・・
 わからなくもないけどな」
 
 
 
ケムリの声の感じから、
詳細は話したくないと思っているのが伝わってきた。
 
 
 
「警告とか、ヤバイ雰囲気って、
 全然わからなかったんですけど・・・
 そんなに強いものがあったんですか?」
透は話題を変えた。
 
 
 
「イワイシは 、誰かが警告してるって言ってたけど
 俺もそこまでは感じなかったな。
 異質っていうか、何か嫌な空気を感じたくらいで」
 
 
 
だいぶ先を歩いていたイワイシが振りかえった。
<はやくこいよ>と言っているようだった。
 
 
 
「・・・ご機嫌を損ねるから、急いだ方がよさそうだな。  
 それにしても、腹が減ってきた。
 昼飯の話をしたら怒るかな?」
 
 
 
「イワイシも、食べることが好きみたいですから、
 怒ることはないですよ。
 でも、ここじゃない方がいいんじゃないのかな。
 たぶん、どこかよさそうな場所を
 事前に調べていると思います」
 
 
 
 
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透とケムリはイワイシに追いつき、
3人で駐車場に向かった。
 
 
 
時計台の近くにとめたクルマのドアを開けると、
ふわっと柑橘系の香りが漂った。
 
  
 
「ミカンでも持ってきたのか?」
ケムリがイワイシにきいた。
 
 
 
「いや・・・持ってきてたとしたら、
 最初からこういう匂いがするはずだろ?
 おかしいな・・・何の匂いだろう?」
 
 
 
レモンを切ったときみたいだと透が思った瞬間、
イワイシが「コピーの石」を入れていた
巾着袋のイメージが見えた。 
「・・・あの石・・コピーの石・・・
 今日、持ってきた?」
 
 
「持ってるけど、何で?
 ・・・その上着、取ってくれ」
イワイシは後部座席のドアを開けたケムリに
シートの上に置いてある自分のジャケットを渡すように言った。
 
 

「ああ・・確かにレモンみたいな匂いがするなぁ」
 
  
 
イワイシはジャケットのポケットから
巾着袋を取り出して、鼻に近づけた。
「いやな匂いじゃないけど、かなり強いな。
 何でコレが原因だってわかったんだ?」
 
 
 
「その袋のイメージが見えたから・・・
 中の石は?」
 
 
 
「砕けたみたいだな」
 
 
 
「え?」
 
 

「この袋に触った瞬間に、ボロッてなったみたいだ」
 
 
 
「イワイシに反応したってことか? 」
  
 
「そうじゃないって思いたいけど・・・わかんないな」
イワイシは袋を透に渡した。
そして、足元に置いたレジ袋の中から、
ミネラルウォーターのペットボトルを出して、
キャップを開けると、ごくごく飲んだ。
「砂みたいになってるかも・・全部じゃないと思うけど」
 
 
 
渡された巾着袋は、妙に軽く感じた。
「なんだか軽い・・・そうだね。
 たぶん砂みたいになってるな。
  
 さっきの場所の・・・
 エネルギー? そういうのがあっただろ?
 イワイシが持っている力っていうか能力みたいなものと
 場所のエネルギーが、何か反応を起こして、
 この石が砕いちゃったような気がする」
 
 
 
「俺もそう思う」
ケムリが即座に言っ た。
「お前が考えている以上に、回りから影響を受けてるし
 回りにも影響及ぼしてるんだ。
 常時そういう状態ってわけじゃないけど。
 
 モトモトの芯の強さ・・・
 とんでもない強さだと思うけど、
 それがあるから、かなりの影響を受けても
 一応、平衡を保ってるっていうか・・・
 動揺しちゃうとダメみたいだけどな」
 
 
 
「動揺しちゃうとダメとかっていうんじゃなくて、
 モトから強くねーんだよ」
イワイシはぶっきらぼうに言った。
毎度のことながら、自分が話題になっているのを
嫌がっているようだった。
 


「・・・暁子サンはどの程度まで把握してるんだろ?
 ココに寄って行けって言ったってことは、
 何かを知ってるってことだろ?」
透はふと疑問に思ったことを口にした。
 
  
 
「来たことがあるのかもしれない。
 俺たちがどの程度のことをキャッチするのか
 知りたいのかも。
 ・・・オーナーの家も、訪問済みなのかもしれないな」
ケムリはそう言うと、後部座席に乗り込んだ。 
 
 
 
 

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