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お話し小箱。「好きに動かしてみよー」14 

 

 
 
 


 
「そろそろって何が?」
 
 
 
透が尋ねると、イワイシは天井に視線を向けて答えた。
「作業を始めても大丈夫だってこと」
 
 
 
「え? さっきのは違うの?」
 
 
 
「・・・あれは俺のミス」
イワイシはちょっと恥ずかしそうな表情を見せた。
 
 
 
「まだまだ修行が足りないな。
 本当に些細なキッカケなのに・・・
 あっという間に意識を持ってかれた」
そして壁に沿って部屋の中を歩いた。
 
 
 
「暁子サンは先生と違って、
 あまり首を突っ込まないんだけどさ、 
 急に大きなエネルギーを感じたときは、
 連絡してくる・・・さっきみたいにね。
 
 俺のこと、信頼してくれてるみたいだけど、
 心配なんだろうな。
 
 ハシバはまだ知らないことが多いし、
 川瀬クンがどういう人なのかわかってないから、
 何かあった時、俺一人じゃ対応できないかもって
 思ってるんじゃないかな。
 
 ・・・じゃ、続きをやろう」
 
 
 
イワイシは部屋の中央に白く光る石を置いた。
「これ、先週、苦労して取ってきた石。
 この石が手に入ったからね、作業はだいぶ簡単になる。
 
 えーと、どの辺に移動してもらえばいいかな。
 
 ハシバは一歩右に移動してくれ。
 ケムリは左に・・・そのくらいでいいや」
 
 
 
「?? これから何するんだ?」
 
 
 
「いや、何かしてもらうわけじゃないんだけど」
 
 
 
数秒後、部屋の隅に置かれた鈍い金色の石から
中央の石に向かって、鮮やかな緑色の光が走った。
 
 
 
透もケムリも移動していたので、
緑色の光の軌跡からは外れたが、
かなり強いエネルギーを持っているように見えた。
 
 
 
「光が通る場所、なんでわかった?」
 
 
 
「わかるっていうかさ、この石が部屋の真ん中にあって、
 残りの石は部屋の四隅に置いてあるから、
 この石とほかの石の間に光の線が結ばれるとすれば、
 部屋の対角線になるだろ?・・・単にそれだけのこと」
 
 
 
 
 
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「これから やる作業が、モディファイっていうか、
 棚の仕組みを変えるってことか?」
ケムリが尋ねた。
 
 
 
「そう。でも、スゴイことをやるわけじゃない。
 繋ぎ替えるだけだ」
 
 
 
「繋ぎ替える? 何をどうやって?」
透は意味が分からなかった。
 
 
 
「さっき、この中から出した石・・・
 あの石のせいで、ヘマしちゃったけど、
 あれが、この棚が石を守る仕組みの、えーと、
 なんて言ったらいいかな・・心臓部っていうか、
 動力源っていうか、そういうものだったんだ」
 
 
 
「石の力を利用して石を守っていたのか」
 
 
 
「そういうこと。
 でも、どんなにパワーのある石でも、その力は無限じゃない。
 ずっと使っていればどんどん減っていく。
 石って、強固で堅牢で変わらないってイメージがあるけど、
 こういう用途に半永久的には使うことはできない。
 
 これからやるのは、
 石のエネルギーに繋がっていたこの棚の仕組みを、
 別のもの・・・別の動力源に繋ぎ替える作業なんだ。
 繋ぎ替えるなんていうと、スゴイ作業みたいだけど、
 この棚の動力源だった石は取り出してあるから、
 新しい動力を引き入れるだけ」
 
 
 
イワイシは大きな水晶を右手に持つと、棚の前に立ち、
空中に文字を書くような感じで動かした。
 
 
 
微かに鈴のような音が聞こえた。
空気が動くのがはっきりと感じられた。
 
 
 
部屋の中央に置かれた石から 、
線香花火のような小さな火花が飛び散った。
 
 
 
イワイシの右手に握られた水晶の尖った先端からも
同じような火花が飛んだ。
 
 
 
バシッという音と同時に部屋の中が一瞬真白になった。
透は反射的に目をつぶった。 
 
 
 
「なんだ、今のは・・・」
ケムリの声がした。
 
 
 
透は目を開けて周りを見回そうとしたが、
紫や緑の残像がチラチラしてよく見えない。
かなり強い光だったようだ。
 
 
 
「しばらく目を閉じていたほうがいい。 
 残像はすぐに消えるから」
 
 
 
 
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イワイシの言葉が途切れると、
水が揺れるような音がした。 
ペットボトルの水を飲んでいるらしい。
 
 
 
「ハシバは、ポケットにあの石を入れてるんだろ?
 石を強く握ってしばらく経ってから、
 ゆっくり目を開ければ、
 チカチカするのはおさまると思う。
 
 ケムリは、指輪の黒い石に触っていれば
 そのうち消える」
 
 
 
部屋の中を歩き回っているのか、
布がこすれるようなかすかな音と靴音が聞こえた。
何かを出し入れしているような音もする。
 
 
 
「残像はおさまってきたか?
 目を閉じてるついでに、
 作業をやってもらおう。
 
 二人とも光る紐みたいなものをイメージして。
 ハシバは金色、ケムリは銀色。
 
 長さは適当でいい。
 イメージしやすい長さで ・・・
 眩しいくらいに光ってるのがいいな。
 
 なんとなくでいいから、カタチが決まってきたら、
 それが自分の頭の上に浮かんでいるところを
 イメージして・・・
 
 へえ・・・二人ともうまいなぁ。
 このレベルなら十分だ。
 じゃあ、これ、もらうからね」
 
 
 
イワイシの声とともに、脳裏に浮かんでいた
光るロープのイメージが一瞬で消えた。
透は驚いて目を開けた。
 
 
 
「??」
 
 
 
「あ、ごめん、びっくりした?
 でも、もらうって言ったよね?」 
 
 
 
「・・・言ったけどさ、
 消えるとは思わなかった」
 
 
 
「ありがたく使わせてもらったからだよ。
 
 ・・・これで作業はおしまい。
 
 金庫に入れてある石をこっちに持ってくる必要が
 あるんだけど・・・量が多いんだよな。
 だから、棚に入れるのは、
 暁子サンと先生にやってもらおうと思ってる。
 あの二人なら、ヘンな並べ方はしないから。
 やってくれって言われたらやるけど、
 その時はまた手伝ってもらうことになるなぁ」
 
 
 
 
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「作業は終わりって・・・
 結局、何をやったんだ?」
ケムリが尋ねた。
 
 
 
「何って・・・言っただろ、新しい動力を引き入れるって」
 
 
 
「そうだけど、どうやって?」
 
 
 
「どうやってって・ ・・
 尖った水晶と、ある性質を持った石があれば、
 誰でもできる・・・うーん・・・誰でもっていうのは
 言い過ぎかもしれないけど」
 
 
 
「新しい動力って何のことだ?」
 
 
 
「・・・<シン>が扱えるエネルギーのこと。
 言っとくけどな、俺が<シン>ってわけじゃない。
 <シン>は人名じゃない。ある状態のことだ」
 
 
 
「意味が分からない・・・」
ケムリはそう言った後、透には理解できない単語を
いくつか呟いた。
 
 
 
「別にわかんなくてもいいじゃんか。
 すべてを知る必要なんかない。
 俺だって何もわかってない。
 単にできることをやってるだけだ。
 どうしてできるのかなんて知らねぇよ」
イワイシはぶっきらぼうに言った。 
 
 
 
「光るロープは? あれは何に使ったんだ?」
透が尋ねた。
 
 
 
「昨日、ふっと思いついたことを試したんだ。
 
 ルート・・・ルートって言い方でいいのかなぁ・・
 動力を引き入れるルートを複数にしたいって
 前から思ってて・・・あのロープを使ってやったんだ。
 予想以上にうまくいったよ。
 
 全部終わったからさ、片付けて移動しよう」
 
 
 
 
 
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「あなたが、川瀬クンね。
 お名前だけ伺ってたわ。
 イワイシくんのお友達って
 みんな将来有望な雰囲気なのねぇ」
 
 
 
華子サンは目を細めてケムリを眺めながら
嬉しそうに言った。
 
 
 
ケムリはちょっと困った顔をした。
明るい色の服が似合う「川瀬クンモード」になっている以上、
川瀬クンとしては素なのかもしれなかったが、
透にとっては、かなり違和感があった。
 
 
 
(ケムリとばあちゃんが同じ場所にいるってこと自体、
 すごくヘンな感じがする・・・)
 
 
 
前回と同じ、立派すぎる広い和室。
いかにも高そうな大きな座卓の反対側に
座っているケムリは、落ち着かないようだった。
 
 
 
床の間の大皿や巨大な花瓶は、
時々、取り変えているのだろうか、
別のものが置かれていた。
やはり、前回のものと同様、とても立派で、
ものすごい存在感があった。
 
 
 
今回も、松花堂弁当風にいくつかのおかずが
美しく盛り付けられた漆塗りの四角い器が
座卓の上に用意されていた。
 
 
 
「イワイシくんも、ハシバくんもたくさん食べるのよ。
 あなたも遠慮しないで食べてね。
 お茶を淹れてくるから、ゆっくりして下さいね」
 
 
 
華子サンが出て行って、しばらくしてから、
イワイシが言った。
「死んだおじいさんに似てるって言われなかったけど、
 えらく気に入られたみたいじゃないか」
 
 
 
「・・・うるせーな」
ケムリはイワイシをにらみつけた。
「あのおばあさん、見た目は穏やかだけど、
 相当鋭いタイプだ。
 もしかしたら、警戒されてるかもしれない」
 
 
 
「そうだな・・・
 
 暁子サンになんて報告するのかな?
 彼女はもうここから移動しているから、
 今、電話をかけてるんじゃないのかな。
 
 ご対面なんて話にならなきゃいいけど」
 
 
 
 
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「どうして警戒されてるって思った?」
透は声を落してケムリに聞いてみた。
 
 
 
「・・・直感かな。
 妙にはしゃいでる感じがする。
 何か隠そうとしている気もするし・・・」
 
 
 
「・・・ばあちゃんってね、眉に表情が出るんだ。
 ホントに一瞬だったけど、眉が妙な動き方してた。
 たぶん、何か違和感みたなものがあったんだろうな。
 石が絡むと、すごく敏感に感じ取るって聞いてたけど、
 ケムリに関してもいろいろな情報が
 自然に入ってきてるんだろうなぁ」
イワイシはそう言うと、軽く手を合わせてから、
芸術的な料理に箸をつけた。
 
 
 
「ばあちゃんに対して、何か手を打たなくていいのか?」
透は心配になってきた。
 
 
 
「手を打つ?
 うーん・・どうしようもないと思うよ。
 あの人が感じたことをどうこうするなんて無理。
 
 まあ、今のところは、
 とりあえず静観してていいんじゃないのかな。
 どういう出方をしてくるか、全然わかんないし、
 黙ってるかもしれないし。
 
 俺とハシバに対してだって、
 ばあちゃんは何か納得できない点があるはずなんだよ。
 
 でも 、暁子サンとか先生経由の紹介だし、
 ばあちゃんの中で<死んだおじいさんに似てる人>って
 カテゴリーに入ってるから、何となくヘンだと感じても
 あまり考えないようにしてると思う。
 
 川瀬クンの場合は、まず、暁子サンや先生が関与してない。
 だから、無条件に信頼しているわけじゃない。
 それから、ケムリはすごくうまくやってると思うけど、
 石絡みだからね・・・ばあちゃんには、川瀬クンの中に
 ケムリの影が見えてるのかもしれない。
 それが違和感につながってるのかも」
 
 
 
「・・・暁子サンは川瀬クンに会いたいなんて言わないだろうけど、
 ばあちゃんが会ってくれって言いそうだな」
 
 
 
「・・・おい。
  それって、今思いついたことか?
 ハシバがポロッと言うことって、
 実際にそうなるんだよなー
 ばあちゃんと暁子サン、
 ちょうどその話をしてるんじゃないか?
 
 うーん・・・それは避けたかったなぁ」
 
 
 
暁子サンが同席するとなれば、
<イワイシさん>として対応しなければならないので、
ケムリがいるとやりにくいんだろうな、と透は思った。
 
 
 
「・・・俺も避けたい。
 オトナぶってるイワイシと、
 川瀬クンのとリ合わせなんて、最悪だ・・・」
ケムリも同じことを考えていたらしく、
顔をしかめてつぶやいた。
 
 
 
「ハシバの直感が外れて欲しいところだけど。
 そろそろばあちゃんが戻ってくる・・・
 
 うーん、やっぱり会う方向になりそうな気がする」
 
 
 
 
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襖が静かに開いて、華子サンが入ってきた。
「お茶をお持ちしましたよー
 あら、今日は遠慮してるのかしら?
 どんどん食べてちょうだいな」
 
 
 
そして三人にお茶を出すと、ケムリをじっと見て言った。
「イワイシくんが手伝いを頼むくらいだから、
 あなたも石のこと、詳しいんでしょう?」
 
 
 
「詳しいっていうのがどのくらいのレベルを
 指すのかわかりませんが、多少は・・・」
ケムリは自信なさそうに答えた。
 
 
 
「彼、謙遜してるのよね?」
華子サンはイワイシに視線を移した。
 
 
 
「うん。コイツ、自分を過小評価する傾向が強いから」
 
 
 
「そう・・・
 今回はイワイシくんのお手伝いってことで
 参加してもらったけど、川瀬クンも正式に
 石の整理を手伝ってもらえないかしら?」
華子サンは再びケムリを見て言った。 
 
 
 
「え・・あ・・はい・・・」
 
 
 
「石に関しては、いろいろ相談に乗ってもらっている人がいるの。
 彼女に会ってほしいんだけど、いいかしら?」
 
 
 
「・・・はい」
 
 
 
<川瀬クン>はものすごく困った表情をしてるけど、
ケムリ自身はどう思っているんだろう??
そんなことを考えながら、透はぼんやりとケムリを眺めていた。
 
 
 
すると、急に華子サンが質問してきた。
「ハシバくんは、川瀬クンと知り合いなの?」
 
 
 
「・・・あの、知り合いっていうか・・・
 イワイシくんの紹介で、先週、初めて会いました」
 
 
 
「あら、そうなの?
 意外ねぇ・・・3人とも幼馴染みたいに見えるのに」
 
 
 
「え?・・・そんな風に見えますか?」
 
 
 
「雰囲気に通じるところがあるわねぇ。
 タイプは全然違うけど、
 3人とも、かなり目を引くタイプね」
 
 
 
 
 
 
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