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お話し小箱。「好きに動かしてみよー」6 



 
「先生はケムリのこと、知らないんだよね?」
 
 
 
「うん。先生と暁子サンには近づいてないはず。
 ちょっとでも近寄ったら、すぐに気づかれると思ってんだろ。
 
 だから、データを消したのは・・というか、
 消せそうな人間としては、俺しか思いつかなかったんだろうなぁ。
 
 もっとも、先生だって、隠し撮りみたいなことをしてるんだから、
 データを消しただろ?なんて訊くわけにはいかない・・・
 
 ・・・そっか、先生にとっても、写真を撮ったことを
 俺に気づかれてるっていうのは、あまりよろしくないんだな。
 
 ここまでケムリのバカが見通してたとしたら、
 なんか面白くないなぁ。
 
 ・・・たぶん、先生は、ハシバだったら、どんな質問しても
 大丈夫だと思ってるんだろう。
 話を聞きたくて仕方ないんだろうなぁ」
 
 
 
「ケムリは、先生のこと、好奇心のカタマリみたいなヤツって
 言ってた」
 
 
 
「確かにその通りだな。
 奴は口が悪いから、イワイシと同じくらいガキくせーとか
 言ってたんだろ?」
 
 
 
「・・・・」
 
 
 
「否定しないってことは、そう言ってたんだな?」
 
 
 
「・・・まあね」
 
 
 
透は短い返事をすると、話題を変えた。
「先生が撮った写真、何が写っていたのか知ってるのか?」
 
 
 
「あの作業の後だからね、想像はつく。
 俺とハシバが 部屋から出てきたところとかだろ?
 全体が白っぽくなってるとか、ハシバが妙に俺に似てるとか、
 そんな感じじゃないのかな?」
 
 
 
「・・・何でもわかるんだな」
 
 
 
「そうじゃなきゃ、先生も写真を撮ったりしないだろうし。
 
 ・・・ハシバはどうやって写真を見たんだ?
 ケムリがイメージを見せたのか?」
 
 
 
「うん。目をつぶれって言われて、目をつぶったら、
 ものすごく鮮明に見えた。
 ホントに写真を見てるみたいだった」
 
 
 
「ふーん・・・
 ケムリは写真のことをわざわざ言いに来た上、
 何が写っていたのかも知らせたんだから、
 先生に訊かれたら、どうやってお返事すべきか、
 ちゃんと説明したんだろうな?」 
 
 
 
「・・・お茶を濁しておけって」
 
 
 
「はぁ? ったく、いいかげんな奴だなぁ」
 
 
 
「うーん・・でも、俺は何もわかってないから、
 結局は、お茶を濁すことになると思うんだけど」
 
 
 




 
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「明日あたり、学校の帰りに先生と会うんじゃないのかな?
 すっごくそんな気がする」
  
 
 
「やっぱりそうなるのか・・・
 写真のこと知ってるから、先生とは話しにくいよ。
 作業のことも、質問されたって答えられないし」
 
 
 
「そうだねぇ・・・先生はかなり鋭いからなぁ。
 でも、写真のことは、先生も話しにくいんじゃないのかなぁ。
 まあ、ハシバには何でも喋りそうだけどね。
 
 作業に関しては、ハシバが把握していることを
 喋ってもかまわないよ。
 でも、ケムリのことは黙ってた方がいいと思う」
 
 
 
「把握って言ってもなぁ。
 イワイシが消えてたことと、
 石がバシバシ砕けたことくらいしかわからないよ」
 
 
 
「じゃ、それを言えばいい」
 
 
 
「写真の話になったら?」
 
 
 
「先生の話を興味津々で聞いてればいいよ。
 あの石を持ってれば、なんとかなる」
 
 
 
「知らないふりって難しいんだけどなぁ」
 
 
 
「・・・あの状況を見て、先生がどう思ったかって
 興味ないか?
 
 知ってることを知らないふりするんじゃなくてさ、
 自分が知らないことを知りたい、
 先生から話を聞きたいって思っていれば、大丈夫だよ」
 
 
 
「そうかなぁ・・・」
 
 
 
「先生は今日の作業について、
 ホントにいろいろ知りたがってる。
 
 写真のことがなければ、俺に質問してたかもしれない。
 
 ハシバにとって居心地が悪い雰囲気になったら、
 詳細を話してもらえなくなるって先生はわかってるから、
 言葉に詰まるような展開にはならないはずだよ。
 写真の話は出さないかもしれないし」
 
 
 
「そうだといいんだけど・・・」
 
 
 
「明日、先生に会うことになったら、あの石を
 思いっ切り強く握ってくれ。合図になるから。
 
 動揺しなくて済むように、少しは手伝えると思う」
 
 


 
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夕方のラッシュが始まる少し前。
電車から降りた透は、自動改札に向かってゆっくり歩いていた。
  
 
 
(先生に会わないといいんだけどなぁ)
 
 
 
そんなことを考えながら改札を通り抜けると
正面に先生が立っていた。
 
 
 
(あ、やっぱり・・・)
 
 
 
先生は透を見てニッコリ笑った。
「話をしたいんだけど、時間、大丈夫かな?」
 
 
 
「・・・ハイ」
 
 
 
「じゃ、行こう」
 
 
 
先生の後ろを歩きながら、
透はポケットに手を突っ込み、石を思いっきり握りしめた。
 
 
 
(これで、合図になるのかなぁ?)
 
 
 
数秒後、何か暖かいものがふわっと身体全体に
広がったような感じがした。
 
 
 
昨日の作業の前に、イワイシから渡された、
透明な玉を連ねた長い首飾りを首にかけた瞬間と
よく似た感覚だった。
 
 

 
 
 
 
先生は階段を下りると、今回もまた、
ファーストフード店に入っていった。
 
 
 
透を振り返り
「コーラでいいよね? 窓際の席に座ってて」
と言うと、レジの方へ歩いて行った。
 
 
 
透は、窓際の席に座った。
身体全体に広がった暖かいものに、
柔らかく包まれているような感じがした。
 
 
 
先生は、前回同様、二つの紙コップを載せたトレーを持ってきた。
そして一つを透の前に置いた。
 
 
 
「どーぞ」
 
 
 
「ありがとうございます」
 
 
 
先生は、透の正面のプラスチックのイスに座ると、
透の顔をじっと見た。
 
 
 
「ふーん・・・やっぱり違うな」
 
 
 
「?? 何でしょう?」
 
 
 
「学校でさ、友達に何か言われなかった?」
 
 
 
「え? いや、特に言われてないですけど」
 
 
 
「前にここで話した時と、だいぶ雰囲気が違うよ?」
 
 
 
「・・そうですか? 自分じゃわかんないです」
 
 
 
(違って見えるのは、イワイシが何かやってるからなのかな?
 あったかいのが、ガードしてくれてるみたいだ)
 
 
 
「具体的にどこがって言うのは難しいんだけど、
 なんだかイワイシさんっぽい印象があるなぁ」
 
 
 
「そうなんですか? 
 死んだおじいさんつながりで、華子サンは、
 イワイシさんに似てるって言ってましたが、
 僕は日本人だし、似てる部分はないと思うんですけど」
 
 
 
 
 
 
 
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「両方知ってるのは、透クンだけなんだよ」
  
 
 
「え?」
 
 
 
「イワイシさんのこと。
 実業家っぽいのと学生っぽいのと、
 二通りのパターンがあるんだろ?
 俺と暁子サンは実業家っぽいのしか知らないし、
 華子サンは学生っぽいのしか知らないからね」
 
 
 
「はあ・・」
 
 
 
「ラフな服装で、透クンとフツーに話すイワイシさんなんて
 全く想像つかないんだけど」
 
 
 
「・・・そうですよね。別人みたいです。
 顔は似てるけど、同一人物には見えません」
 
 
 
「・・・そんなに違うの?」
 
 
 
「はい。なんだか兄弟みたいです。
 表情や雰囲気が全然違うので」
 
 
 
「本人は何て言ってる?」
 
 
 
「僕が友達と話す時と、先生と話すときでは
 言葉や態度が変わるのと同じだって言ってました。
 イワイシさん自身は、そんなに変わってるとは
 思ってないみたいです」
 
 
 
「二重人格とかじゃないよね?」
 
 
 
「あ、それはないです。記憶はつながってるし・・・
 つながってるなんて、ヘンな言い方ですけど、
 ちゃんと同一人物です。
 でも、見た目はホントに別人に見えるんです。
 本人としては、相手に合わせてるだけって感覚らしいですが」
 
 
 
「ふーん。そうなんだ。
 イワイシさんにね、透クンと話す時みたいに
 友達モード喋ってみてってお願いしたことあるんだ。
 でも、僕に対しては絶対ムリなんだってさ」
 
 
 
「先生や暁子サンは、重要なお客さんだから
 できないって言ってました」
 
 
 
「・・・そういうところが、微妙なんだよなー
 尊敬してくれてるから、言葉にも気をつけているんだろうし、
 彼の仕事のやり方は文句のつけようがないんだけど。
 ・・・でもさ、めちゃくちゃガードが固い部分があるんだよね。
 そう簡単には踏み込ませないっていうかさ」
 
 
 
(確かに<イワイシ>は、かなり無防備だけど、
 <イワイシさん>は、素じゃないよな・・・)
 
 
 
「ラフな格好の時のイワイシさんって、
 透クンとどういう話してるの?」
 
 
 
 
 
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「どういう話って・・・
 たいてい、僕がいろいろ教えてもらってますが」
 
 
 
「たとえば、どんなこと? 
 昨日の作業のことも、事前にいろいろ教えてもらったの?」
 
 
 
 (やっぱりきたか・・・)
身構えた瞬間、肩のあたりに
暖かいものがふわりと触れたような感じがした。
 
 
 
「僕がやることは教えてもらいました。
 ・・・やることって言っても、ただ待ってるだけですけどね。
 イワイシさんが何をしていたのかは聞いていません」
 
 
 
言葉がすらすら出てきたので 、
透は内心驚いていた。
 
 
 
「待ってるって?」
 
 
 
「イワイシさんは部屋の下で作業してくると言っていました。
 それを待っていたんです。
 作業は20分で終わる予定で、戻ってこなかった場合は
 暁子サンに連絡することになっていました」
 
 
 
「部屋の下? あの部屋、床板が外れるのか?」
 
 
 
「いえ、そうじゃなくて・・・
 あの、よく考えてみると、ヘンな話なんですけど、
 イワイシさんはいなくなっていました」
 
 
 
「いなくなる? 消えたってこと?」
 
 
 
「はい。部屋の中は真っ暗で、
 ペンライトの光しかなかったから、
 もしかしたら目の錯覚かもしれませんが、
 ふっと消えたように見えました」
 
 
 
(・・・あったかいモノのおかげかなぁ。
 シドロモドロにならなくてよかった) 
 
 
 
「ふーん・・・それで、イワイシさんが消えた後、
 透クンは何してたの?」
 
 
 
「イワイシさんに渡された砂時計を見ながら
 待ってました。
 部屋の中に黒い石が積み上げてあって、
 それがオレンジ色に光って、バンバン破裂していくので
 ちょっと怖かったです」
 
 
 
「・・・黒い石?」
 
 
 
「あの・・・変色して黒くなって戻せなくなった石です。
 部屋を区切るみたいにして積み上げてありました。
 ・・・柵みたいになっていました」
 
 
 
「柵って・・・そんなに沢山あったのか?」
 
 
 
「はい。高さは70センチくらいあったかもしれません」
 
 
 
「・・・そんなに大量に?」
 
 
 
 

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