みにくいおひめさま
新しい世界の幼年童話 7
フィリス・マッギンリ- (著), なかがわ そうや (イラスト)
まさき るりこ (翻訳)
1968年 学習研究社




(2005.08.19作成)


誕生日パーティの後、ついに王様は懸賞つきの広告を新聞に載せた。

けんしょう
きりょうのわるいむすめを、うつくしいむすめにかえることができた
ものには、ほうびとして、きんのはいったさいふをとらせる。
ただし、しっぱいしたものは、そのくびをうしなうべし。


王様は「おしろの渉外委員会にもそうだんしないで」広告を出してしまった。
広告の掲載後、1週間は誰もお城に来なかった。
首を切られる危険性があるのなら、絶対に成功させる自信がない限り
こんな懸賞には応募できない。


ただ一人応募してきたのは5人の娘を育てている未亡人。
「器量の悪い娘を美しい娘に変える魔法を証明するもの」を王様から
要求されると、彼女は自分の娘たちの写真を見せた。
「ほんとうにこんなにうつくしいむすめたちは見たことがない」と、
思わずにはいられないほどの美貌の持ち主たちだった。


グットイット夫人と名乗った未亡人は渋る王様を説得して
「三月が三どすぎるあいだ」の猶予をもらい、王女を自宅に連れて帰った。


グッドイット夫人の美しい娘たちの名前はアナベル、クリスタベル、
ダルシベル、フロリベル、それからエコー。
グッドイット夫人の家は「なにもかも、つるつるにみがかれたかぶらの
ようにせいけつ」だったが、お城の贅沢に慣れてしまったエスメラルダには
「がまんできないくらいわびしくみえ」て、エスメラルダは泣いてしまった。


グッドイット夫人の家では、誰もエスメラルダを「王女」として扱っては
くれなかった。
エスメラルダは家の仕事を手伝わなければならないと知って驚いた。
夫人から
「さいしょはあまりたくさんしなくていいんですよ。かえってじゃまになる
 でしょ。でも、そのうちに、じぶんだって、ほんとうののうなしじゃない
 んだってことが、わかりますよ」
と言われてカンカンに怒ったエスメラルダだったが、やがて、自分が
「まったく のうなし」だということが理解できた。


みんな、いろんなことができた。
いろんな遊びをたくさん知っていた。
幼いエコーでさえ、木登りはエスメラルダより上手だった。


エスメラルダは家の仕事を慣れないながらやるようになった。
自分のことは自分でしなければ、誰もやってくれないからだ。
それでも、グッドイット夫人の娘たちに、お城の贅沢な生活を
長々と話して、自分が王女だということをアピールしていた。
しかし、それに対しても
「あなたは、王女さまかもしれないけれど、わたしたちみたいに、
 なわとびをしたり、まっすぐ運針ができるようなことは、ならって
 いないんじゃないの。きょうだいも、おともだちもなかったんでしょ。
 おかねもちだとか、王様のむすめだということの、どこがいいの?」
と、ガツンと言われてしまう。


エスメラルダは、みんながやっていることを自分でやろうとする時の、
自分の指のあまりの不器用さに気づきはじめ、
「王女にうまれたということだけでは、ほんとうは、えらくもなんとも
 ないのかもしれない」
という疑いを持ち始めた。


最初の3ヶ月が終わる頃、魔法が起こる。
「小鳥がこえたかくさえうずり、雨あがりでもないのに、空には、
 にじがかかりました。」
エスメラルダの鼻が下を向いたのだった。
「あなたは、やっぱり、まほうつかいだったのね!」
と叫ぶエスメラルダにグッドイット夫人は
「そうかもしれないけど…(中略)あなたが、ほかの人たちにたいして、
 はなをつんと上むけなくなったせいかもしれませんよ」
と言う。



次の3ヶ月が終わる頃、再び魔法が起こる。
「とつぜん、戸口のそばのバラが、つぼみをひらき、コオロギがなき、
 フロリベルがさけびました。」
「エスメラルダ!あなたの口、りょうはしがあがったわ!」
ヘの字に垂れ下がった口はかわいらしく口角が上がったのだった。
「まほうよ。」とはしゃくエスメラルダにグッドイット夫人は
「そうかもしれないけど…でもね、エスメラルダ、あなたは、毎日が
 おもしろくないから、口をへのじにむすんでいたのかもしれないわ。
 あなたは、いままで、じぶんの手でものをつくるよろこびをしらなかった
 んじゃないかしら」
と、言う。


エスメラルダはお城へ帰る日を指折り数えることを忘れ、両親を恋しく
思うとき以外は、お城にいるよりグッドイット夫人の家にいるほうが
楽しいと感じるようになっていた。
5人の娘たちと遊び、喜んでお手伝いをし、昔の贅沢をなつかしむ気持ちを
なくしていった。
エスメラルダが自分が王女であることの証としてながめていた真珠の
ロケット(特に価値のあるものでもなかったのでグッドイット夫人は
お城から持っていくのを許してくれたのだった)は、たんすの引き出しに
しまいこまれていた。
夫人は変わっていくエスメラルダを喜び、しょっちゅう褒めた。



最後3ヶ月が終わる頃、エコーの誕生日が近づいていた。
エスメラルダはエコーが大好きだった。
幼いエコーだけが、おきまりの贅沢話を一生懸命聞いてくれ、
エスメラルダの後を影のようについて回ってくれたのだった。
だからエコーの誕生日にはすてきなプレゼントをあげたかった。
エコーの姉たちは手作りのプレゼントを用意していた。
しかし、エスメラルダは何もプレゼントを思いつけなかった。
「おしろにある、なん千というざいさんをおもいうかべましたが、
 いまはそんなものは、なんのやくにもたちません。」
エスメラルダは、真珠のロケットをエコーにあげることにした。


エコーの誕生日の朝、3度目の魔法が起こる。
「ふゆのあさのひかりが、ひとすじあかるく、エスメラルダのあたまの 
 上にかがやきました。どこかとおくで、かねのねがなりひびき、
 フロリベルがおどろいて、目をあげました。」
「エスメラルダ!あなたの目、ほしのようにかがやいているわ!」
グッドイット夫人は
「あなたが、うまれてはじめて、ひとのよろこぶことをしてあげたから
 目がかがやくようになったのかもしれませんよ」
と言った。



この魔法が起こった直後に王様が迎えに来る。
美しくなったエスメラルダを見て驚く。
「エスメラルダ!かわいい子!なんて、きれいなんだ!本当にお前なのか?」
「どれ、ゆっくりみせておくれ。まるでしんじられぬ…
 わたしににた口と、母にそっくりのはなと。それに、おお、なんと
 すばらしい、かがやきのある目じゃ!」
王様はグッドイット夫人に褒美を受け取るように説き伏せたが、夫人は
「王女さまが、ごじぶんで、まほうをおこなわれたのですから。」
と言って受け取らなかった。



エスメラルダがお城に戻ると、「王さまのつかいがさきにうれしいしらせを
もちかえっていたので」国中が大喜びだった。
おかかえの詩人たちが五十番まである「エスメラルダ」という長い歌を
記念につくった。
でも、エスメラルダは落ち着いてつつましくしていた。
以前の彼女を知る両親は病気じゃないかと心配するほどだった。


エスメラルダは王さまとおきさきさまを説得して、グッドイット一家を
呼び寄せるようにした。
彼らは住み慣れた家を離れることを嫌がったが、おきさきさまが
「むすめたちのきょういくや、えんだんのためにはそのほうがよい」
とおっしゃったので、夫人は承知した。
エスメラルダはグッドイット一家の家(庭師の家を改築したもの)へ
よく遊びに行って、三月が3度過ぎる間に身につけた、自分の力を磨いた。
5人の娘たちに自分のおもちゃをいつでも喜んで貸し出した。


エスメラルダの9歳の誕生日パーティ。
チャールズ・マイケル王子は
「アヒル池に逃げていくどころか、王女になみなみならぬちゅういを
 はらい、となりにすわって、王女の紙のかんむりを、まっすぐになおして
 さえくれました。」


エスメラルダは
「大きくなるにつれ、『きりょうのわるいエスメラルダ』ではなく、
『うつくしいエスメラルダ』として、とおくまでしれわたるように
 なりました。」
「そして、それからさき、みんなしあわせにくらしました」


物語はここで終わる。
エスメラルダとチャールズ・マイケル王子はたぶん結婚したのだろう。



私は「女の子の顔の美醜」についてこんなに具体的に語った物語は
読んだことがない。

美しさを目、鼻、口を使ってわかりやすく表現しているが、3つとも
心の状態と密接にかかわっている。


王女さまとして生まれ、いいものに囲まれ、完璧なを食事をし、
十分なケアを受けていても、心の状態が悪ければ、美しくはなれない。



・他人を尊重する(下を向いた鼻)
・毎日を楽しくすごす、モノを作る喜びを知る(両端の上がった口)
・他人を喜ばせることをする(輝く瞳)

これは女の子の美しさのためだけでなく、よい人間関係をつくり、
楽しい生活を送るための「人生訓」とも言えると思う。



この本に再会できて、本当によかった。




なつかし図書館のページへ
http://www.m2-dream.net/?page_id=6