みにくいおひめさま
新しい世界の幼年童話 7
フィリス・マッギンリ- (著), なかがわ そうや (イラスト)
まさき るりこ (翻訳)
1968年 学習研究社


(2005.08.18作成)

Amazonでは現在、在庫切れになっている。
古い本だし、もう絶版になっているのかもしれない。


この本を読んだのは小学校中学年くらいだったと思う。
額縁のような楕円形で囲まれた中川宗弥氏の挿絵が好きだった。
実家の本棚で久しぶりにこの本に再会して、
「わー懐かしい! これ好きだったなぁ」
と、読み始めたら、物語に入り込んでしまい、一気に読んでしまった。
子供向けのお話ということになっているが、大人向けの童話と言っても
いいんじゃないかなぁと思った。



むかし、あるとおい王国に、ひとりっこの王女がいました。
なまえをエスメラルダといい、ただひとつのことをのぞけば、
せかい一しあわせな王女でした。


物語は、こんな文章で始まる。



王女の父である「王さま」は富と権力を持っているけれど、チョッキの
ポケットにはいつもおいしいおかしをいっぱい入れていらっしゃる方で、
王女の母である「おきさきさま」はおたんじょう日パーティをこっそり
計画したり、エスメラルダが宝石のついた冠をつけて遊ぶのを許して
くださるような方。


エスメラルダのタンスには華やかなドレスが何十枚もあり、
お城の庭に数え切れないほどある高い木のすべてに王女のブランコが
ぶらさがり、(背の高い庭師の唯一の仕事は王女のブランコをゆすること)
エスメラルダのために国中探しても二つとない、素敵なローラースケートや
最高の自転車が用意され、
二人のコックが一日中、王女のお気に召すようなプリンやアイスクリーム、
素敵なサラダを作るのに専念し…というように「いいことづくめ」だったが、
王女がただ一つ持っていないものが問題だった。
国中の人が嘆くほど。
誰の目にも明らかなこと。


エスメラルダは美しくなかった。


「王女さまが年頃におなりあそばしたら、一体どうなるのでしょう。
 王女さまと結婚して国をお治めになるはずの、隣の国のチャールズ・
 マイケル王子に愛されることなど、望めないんじゃないでしょうかねぇ」
お城の人たちのひそひそ話。
小学生の時にこの内容を理解していたのかどうか。
お姫様と王子様はケッコンしてシアワセに暮らすものという思い込みは
あったような気がするが…
最初から結婚相手が決められているってどういう感じなんだろう?
特定の男性から愛されなければならないなんて、すごいプレッシャーだ…



娘をとても愛している王様とおきさきさまでさえ、王女の器量は
自慢できないということをご存じだった。
エスメラルダは「きりょうのわるいエスメラルダ」として知れ渡っていた。
お金と力のある王様が手をこまねいていたわけではない。
宮廷付きの医者たちが「これ以上ないくらい、完全な献立」を考え、
家庭教師がエスメラルダの姿勢に気をつけ、
ダンス教師が上品な動作を教え、
女中が朝晩100回ずつエスメラルダの金髪を梳かし、
宮廷付きの歯医者が歯がまっすぐになるように金の枠をつくり…
大勢の人間がエスメラルダの器量をよくしようと力を尽くしていた。


エスメラルダの国では、「両端の上がった口」と「下を向いた鼻」と
「いきいきと輝く目」がよい器量とされていた。
しかし、エスメラルダの鼻は上を向き、口はへの字に曲がり、目は
キレイな青い目だったにもかかわらず、輝きはなかった。


しかし、王女自身は自分の不幸には気がつかず、みんながちやほやと
世話を焼いてくれたので、7歳になる頃には、誰よりも自分が偉いと
考えるような傲慢な子になっていた。


エスメラルダの8歳の誕生日に事件が起こった。


盛大な誕生日パーティには「チャールズ・マイケル王子」も招待されて
いたのだが、王子はパーティの途中で逃げ出してしまったのだ。
彼は「アヒルばんのむすめ」と遊んでいた。
パーティから逃げ出した理由を尋ねられた王子は正直に答えた。
「だって、あひるばんのむすめのほうがすきなんだもの。
 口は両端が、可愛く上がってるし、鼻はきれいに下向いてるし、
 目は世界一楽しそうに輝いているんだよ」
みんなこれを聞いてしまった。
エスメラルダは怒って泣き出し、王様とおきさきさまは辛そうに目を落として
自分たちの部屋へ帰ってしまった。


「ほうら、やっぱりだ。あんな器量の悪い王女さまに、国を治められたのでは
 なかなかうまくいくまいよ」
お城のほかの人たちは目配せしあい、ささやきあった。



つづく
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