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ゆうやけシリーズ

 
2007年に作ったお話です。
当時妊娠中だったお友達のお嬢さんのために作りました。 
  
◇ ゆうやけケーキ ◇ 
 
◇ ふわふわちゃん ◇ 
 
◇ ゆうやけパン ◇   
 
 
  
 

 ◇ ゆうやけケーキ ◇ 

 
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ゆうやけケーキ
 
 
フューシャの おうちに もうしばらくしたら あかちゃんが きます。
フューシャは とっても たのしみに しています。
 
「あかちゃんが きたら おいわいしよう」
フューシャは かんがえました。
「おいわいだったら、ケーキだ」
 
あかちゃんは ケーキを たべられるかな?
はが ないし、おっぱいしか のまないかも。
でも、ケーキで おいわい したいなぁ。
 
フューシャは まどから そとを みあげました。
もう ゆうがた です。
ピンクいろの そらに くもが きんいろに ひかっています。
 
「こんにちは。ゆうやけケーキや です。
 やきたての ケーキ、いかがですか?」
 
いつのまにか まどの わくの ところに 
オレンジいろの ふくをきた
ちいさい ひとが たっていました。
 
「あなたは、だあれ?」
「ゆうやけケーキや です。
 ごししょく、 いかがですか?」
 
「ごししょくって?」
「ためしに ちょっと たべてみることですよ。
 あかちゃんの ケーキを さがして いるんでしょう?」
 
オレンジいろの ふくをきた ちいさい ひとは
フューシャの てのひらに けしごむくらいの おおきさの
きんいろの かたまりを のせました。
 
「これはね、ふわふわで ほわほわで、ぴかぴかの くもの なかから
 いちばん おいしいところを とりだして ゆうひで やいて、
 まほうのきらきらを ふりかけて あるんですよ。
 あかちゃんは おおよろこびで たべますよ」
 
フューシャが きんいろの かたまりを くちにいれると
ふわっと やさしいあじが くちのなか いっぱいに ひろがりました。
むねのあたりが ぽぅっと あったかくなって 
とっても いいきもちに なりました。
 
なんだか たのしくなって からだが ふわふわする かんじです。
 
「ふわふわするよ」
「そりゃ、ふわっふわの まほうの くもを たべたから ですよ。
 このケーキはね、おくちが おいしいのと、
 からだが ふわふわするのと
 りょうほう たのしめる おとくな ケーキ なんですよ」
 
「これ、あかちゃんが きたら いっしょに たべたいなぁ」
「ちゅうもん しますか?」
「うん。でも、おかあさんに きかないと」
「どうして?」
「おかね、いるんでしょ?」
「そのしんぱいは いりません」
 
オレンジいろの ふくをきた ちいさい ひとは
ポケットから、ぎんいろの リボンを とりだしました。
 
「こっちの はしっこを もってください」
フューシャは リボンの はしっこを もちました。
「あなたが いちばん たのしいことって なんですか?」
フューシャは かんがえました。
「おとうさんと おかあさんと ゆうえんちへ いくこと!」
すると、リボンが ぽっとひかりました。
「ほかには?」
「おかあさんと おりょうり すること!」
リボンが ぽぉっとひかりました。
「ほかには?」
フューシャは かんがえました。
「おうたを うたうこと!」
こんどは、リボンが きらきらと まぶしいくらいに ひかりました。
 
「では、フューシャさん」
オレンジいろの ふくをきた ちいさい ひとは
まじめなかおをして いいました。
「あかちゃんが ここのおうちに きたひに
 ケーキを おとどけに まいります。
 それまで、まいにち おうたを うたって くださいね。 
 あなたが おうたを うたったときの こころの きらきらが
 あかちゃんの ケーキを つくるのには ひつようです。
 きらきらが たりなかったら おいしい ケーキは つくれません。
 まいにち おうたを うたうこと、おやくそく できますか?」
 
「はいっ」
フューシャは うれしくなって おおきなこえで へんじを しました。
 
オレンジいろの ふくをきた ちいさい ひとも
うれしそうなかおをして にっこり わらいました
 
「あかちゃんに おめにかかるのを たのしみに しています」 
そういうと、まどのわくを けって、 
ピンクいろの そらへ とんで いきました。
 
 
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あかちゃんの ケーキを ちゅうもんしたひ から
フューシャは、まいにち おうたを うたっています。
 
きらきらは どのくらい できたかな?
ケーキは いつごろ やくのかな?
 
フューシャは、あかちゃんと いっしょに 
ゆうやけケーキを たべるのを
とても たのしみに しています。 
 
 
(おわり)
 
 
 
   
 
 
 
 
 
 

 ◇ ふわふわちゃん ◇ 

 
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ふわふわちゃん
 
フューシャの おうちには もうすぐ あかちゃんがきます。
フューシャの おかあさんの おなかは まんまるです。
 
 
おかあさんと フューシャが いっしょに でかけると
「あかちゃん、もうすぐですね」
と、みんなが こえを かけてくれます。
そして フューシャにむかって
「もうすぐ おねえちゃんね、たのしみね」
と、いってくれます。
フューシャは うれしくなって にっこり わらいます。
 
 
でも、このごろ あかちゃんが おうちへくる じゅんびを している
おかあさんの ようすを みていると
むねの おくのほうが ちくんとします。
 
あかちゃんが くるのは とっても たのしみなのに
おねえちゃんに なるのは すごく うれしいのに
 
 
こうえんへ いったときも おかあさんに とびついて 
あまえている おんなのこや
おかあさんと おいかけっこを している
おとこのこを みると
むねの おくのほうが ちくんとします。
 
 
おかあさんの おなかには あかちゃんが いるから
いまは はしれない。
おもいものも もてない。
だから あたしが おかあさんを まもってあげるんだ。
 
フューシャは むねのちくんが きに ならないように
おかあさんの てを ぎゅっとにぎります。
そして そらを みあげます。
おかあさんと あそんでいる おともだちが みえないように。
 
  
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あるひの ゆうがた フューシャは まどのそとを みていました。
うたを うたおうと しているのに
むねの おくが ちくちくして うたえません。
 
 
フューシャは しんぱいに なってきました。
「あかちゃんの ケーキが つくれなくなっちゃう」
 
 
フューシャは あかちゃんが おうちに きたときに
おいわいをしたくて ゆうやけケーキを ちゅうもん したのです。
 
ケーキやさんとの やくそくは まいにち うたを うたうこと でした。
 
あかちゃんの ケーキを つくるときには 
フューシャが うたを うたったときの こころの きらきらが ひつようで、
「もし、きらきらが たりなかったら、ケーキは つくれません」
と、ケーキやさんから いわれていたのです。
 
「こまったなあ。どうしよう」
 
そのとき
「こんにちは」
と、こえがして、いつのまにか まどわくに 
オレンジいろのふくの ちいさいひとが たっていました。
「あ、ゆうやけケーキやさんだ」
「もうすぐ あかちゃんがきますね。
 フューシャさんが まいにち うたを うたってくれたから
 あかちゃんの ケーキには きらきらを たくさん いれられますよ」
と、いって にっこり わらいました。
 
「あの、あのね」
フューシャが いいかけると、ちいさいひとは
「ちくちくしてるんですね」
と、いいました。
 
フューシャは どうして わかるんだろうと おもいながら うなずきました。
「むねのところに てを あてて 
 めを つぶってごらんなさい」
いわれた とおりに すると、
まぶたの うらがわに、しろくて ふわふわした
ちいさいこが しょんぼり すわっているのが みえました。
 
そのこの まわりには たくさんの こおりの かたまりが ありました。
 
「あれは、だあれ?」
「あなたの こころの なかにいる おともだち」
「ふわふわしてて かわいいね。でも、さみしそう」
「あなたが さみしいと、あのこも さみしくなって しまうんですよ」
「そうなの?でも、あたし、さみしくないよ」
フューシャが、そういったとたん、なみだが ぽろんと こぼれました。
「あれ?」
フューシャは びっくりしました。
 
のどの おくが きゅーっとなって なみだが ぽろぽろ こぼれました。
 
「もう だいじょうぶ」
ちいさいひとは また にっこり わらいました。
「あなたは さみしいを こおらせて こころのなかに 
 とじこめて いたんですよ。
 いまね、さみしいの こおりが とけて 
 なみだに なって でていきましたよ。
 
 もういちど めを つぶって みて ごらんなさい」
 
ふわふわしたこの まわりの こおりは なくなっていました。
「でも、あのこ、まだ ちょっと かなしそう」
ちいさいひとは フューシャの めを じっと みて いいました。
「ひとりぼっちだと さみしいですよね」
「あのこの おともだちは どこに いるの?
 あたしは おともだちに なれないの?」
「あなたは おともだちですよ。
 でも いままで きが ついて いなかっただけ。
 これからは きを つけて みていて あげて くださいね。
 
 あのこは ふわふわという なまえ。
 たのしいことが だいすきです。
 
 あなたが うれしいと ふわふわちゃんも うれしい。
 あなたが かなしいと ふわふわちゃんも かなしい。
 
 あなたが さみしいを がまんしていると、
 さっきみたいに こおりに なって しまいます。
 ふわふわちゃんは さむくて こごえてしまいます。
 こおって いしに なって しまいます」
フューシャの めから また なみだが ぽろんと こぼれました。
 
「ふわふわちゃんも あなたと おなじように 
 おかあさんが だいすき。
 おとうさんも だいすき。
 
 ふわふわちゃんの おかあさんは、
 あなたの おかあさんの こころのなかに います。
 
 ふわふわちゃんの おとうさんは、
 あなたの おとうさんの こころのなかに います。
 
 あなたが おかあさんの そばに いきたいとき、
 ふわふわちゃんも そうしたいんです。
 
 おとうさんと あそびたいときは、
 ふわふわちゃんも そうなんです。
 
 だから がまんしないで。
 
 あなたの おとうさんも おかあさんも
 ふわふわちゃんの おとうさんも おかあさんも
 
 あなたと ふわふわちゃんのことが
 ほんとうに ほんとうに 
 だいすきなんですから」
 
フューシャは うなずきました。
「むねの おくが ちくちくしているときは、
 こころの げんきが なくなっているときです。
 
 ふわふわちゃんを みていて あげれば、
 こころが げんきかどうか わかります。
 
 さあ、おかあさんの ところへ いってごらん。
 なにも いわなくても だいじょうぶだから」
 
「あの、あのね」
フューシャは さっきから きに なっていたことを きいてみました。
「あかちゃんの ケーキ、だいじょうぶだよね?
 あたしの こころの なかに こおりが いっぱい あったけど、
 ケーキ、おいしくできるよね?」
 
ちいさいひとは にっこり わらいました。
「だいじょうぶですよ。
 あなたの きらきらは すばらしいです。
 あかちゃんの ケーキは 
 びっくりするくらい おいしく できますよ。
 たのしみに していてください」
フューシャは ほっとしました。
「どうもありがとう。おかあさんの ところへ いってくる」
 
 
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フューシャは だいどころにいる おかあさんの ところへ いきました。
そして、おかあさんに だきつきました。
おかあさんは フューシャの あたまや せなかを なでてくれました。
めを つぶると ふわふわちゃんが おかあさんに くっついて
せなかを なでてもらっているのが みえました。
 
フューシャは うれしくなって わらいました。
ふわふわちゃんも うれしそうに わらっていました。
 
(おわり)
 
 

 
 

 ◇ ゆうやけパン ◇ 

 
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ゆうやけパン
 
 
キィの おうちは パンやさん です。
キィの おとうさんも、おじいさんも、そのまた おじいさんも
そのまた おじいさんも パンやさん でした。
 
キィは パンが だいすきです。
たべるのも、みるのも、さわるのも、
においを かぐのも だいすきです。
 
キィの おうちでは あさと ゆうがた とても いそがしくなります。
 
あさは パンを どんどんやいて、
やきたてパンを おみせに ならべます。
おおぜいの おきゃくさんが きます。
 
ゆうがたは つぎのひのあさ パンをやく じゅんびと 
おみせの おそうじです。
 
おとうさんも おかあさんも おおいそがし。
おじいちゃんも おばあちゃんも おおいそがし。
おにいちゃんと おねえちゃんは 
おとうさんたちの おてつだいを します。
 
キィは まだ ちいさいので 
おにいちゃんのように こむぎこを はこぶことは できません。
 
おねえちゃんのように パンやきがまの おんどを ちょうせつしたり、
ほうきで おみせのなかを きれいに することも できません。
 
みんなが いそがしいとき キィは ちょっと さみしくなります。
 
 
あるひの ゆうがた、おにいちゃんが 
キィに ひらべったい はこを くれました。
 
あおと しろの しましまの きれいな はこです。
なかには クレヨンが はいっていました。
ながいの みじかいの 
ふるいの あたらしいの
いろんないろの クレヨンが いっぱい はいっていました。
 
「ぼくも おねえちゃんも つかった クレヨンだよ」
 
おにいちゃんは あたらしい スケッチブックも くれました。
 
「まんぷくドーナツは ぼくが かんがえたんだよ。
 こういうのが たべたいって えをかいたら 
 おとうさんが そのとおりに やいてくれたんだ。
 
 だから キィも じぶんが たべたい パンのえを かいてごらん。
 おいしそうに かけたら、おとうさんが やいてくれるよ」
 
おにいちゃんは そういうと おみせの ほうへ はしって いきました。
 
キィは おみせの いりぐちの ベンチに すわって、
スケッチブックを ひろげました。
どんな パンが いいかな?
 
クレヨンの はこの なかには おいしそうな いろが たくさん ありました。
 
まんげつの おつきさま みたいな むしケーキの うすい きいろ
こんがり やけた やまがたパンの てっぺんみたいな こげちゃいろ
さっくさくの クロワッサンの あかるい ちゃいろ
 
キィは クレヨンを みながら かんがえました。
あかるい ちゃいろの クレヨンで パンの えを かこうとしたとき、
しろい がようしが すこし オレンジいろに みえるのに きが つきました。
 
「ああ もう おひさまがしずむんだ」
 
キィは そらを みあげました。
オレンジいろと ピンクいろを まぜたような くもが うかんでいました。
 
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「ふわふわしてて おいしそう」
 
キィは あかるい ちゃいろの クレヨンを はこに もどして
ゆうやけの くもの いろを さがしました。
 
「オレンジと、ピンクと、それから、きいろかな。
 ふわっふわの くもみたいな パンがいいな。
 もくもくしてて おっきいんだよ」
 
キィは ひとりで おしゃべりしながら、スケッチブックに
ふわふわ もくもくの パンを かいてみました。
 
「もっと おおきいほうが いいや。
 ちょっぴり あまくて、ちょっぴり イチゴのあじが するといいな」
 
「こんにちは」
 
きゅうに こえが きこえたので びっくりして 
かおを あげましたが、だれも いません。
 
「ここですよ」
 
ベンチの せもたれの ところに オレンジいろの ふくをきた
ちいさいひとが たっていました。
 
「とても たのしそうですね」
 
ちいさいひとは うれしそうに にこにこ わらいました。
 
「わたしは たのしんでいるひとが だいすきです」
 
キィは うれしくなって
 
「あのね、ゆうやけパンを かいているんだよ」
 
といって、スケッチブックの えを ちいさいひとに みせました。
 
「おいしそうですねぇ。すばらしいです。
 このえを つかわせて もらえませんか?
 おみせの かんばんに したいのです」
 
「でも、これ おとうさんに みせるんだ。パンを やいて もらうんだよ」
 
「かがみに うつしたいのです。
 あなたが、いいよって いってくれれば、ですが」
 
「かがみに うつすだけ? それなら いいよ」
 
ちいさいひとが てを おおきく うごかすと スケッチブックと
おなじくらいの おおきさの かがみが でてきました。
 
「スケッチブックを ここにたてて くれませんか?」
 
キィが ベンチに スケッチブックを たてると、ちいさいひとは
かがみを スケッチブックと むかいあわせに おきました。
 
「これで よし」
 
それから キィを みあげて いいました。
 
「あなたに かいてもらったという しるしを つけたいのです。
 あなたが すきなものは なんですか?」
 
「パンだよ」
 
「では、めを とじて、おいしいパンを 
 たべているところを かんがえてください」
 
キィは めをつぶって おとうさんに やいてもらった 
ゆうやけパンを たべているところを かんがえました。
 
「どうもありがとう。あなたの しるしが つきましたよ」
 
かがみのなかの ゆうやけパンには ぎんいろの 
きらきらした もようが ついていました。
 
「これが ぼくの しるし?」
 
「そうですよ。
 これで パンやの キィさんが かいたえ だとわかります。
 ほんとうに どうも ありがとう。
 これで おみせの あたらしい かんばんが つくれます。
 わたしの おみせは ゆうやけケーキや という なまえです」
 
ちいさいひとが また てを おおきく うごかすと、
せっけんくらいの おおきさの きんいろの かたまりが でてきました。
  
「これは わたしの おみせの ゆうやけケーキです。
 かんばんの おれいです。たべてみて ください。」
 
ケーキは ふわふわしながら、キィの てのなかに おりてきました。
 
かおを ちかづけると、とても おいしそうな いいにおいが しました。
ひとくち たべると、なんだか とっても いいきもちに なりました。
もうひとくち たべると、すごく たのしくなって きました。
キィの くちが とっても よろこんでいる かんじが しました。
 
「ぼくの おくちが よろこんでるよ」
 
「おくちを よろこばせる じまんの ケーキですからね」
 
「おいしいねぇ。ふわふわしてて、なんだか からだも ふわふわしてくるよ」
 
「ふわっふわの くもが ざいりょうなんですよ」
 
「ごちそうさま。おいしかったよ。
 ぼくの ゆうやけパンも おくちが よろこぶパンに なるといいな」
 
「キィさんの えは すばらしいし、
 あなたの おとうさんは すごいパンやさんです。
 だから、とても おいしいパンに なりますよ。
 さて、かんばんを かんせいさせて、
 おみせに かざることに しましょう」
 
ちいさいひとが てを おおきく うごかすと ベンチの うえにあった
かがみが ふっと きえました。
 
 
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ちいさいひとは もういちど キィを みあげて いいました。
 
「キィさん、どうもありがとう。
 あなたは ほんとうに パンが だいすき ですね。
 パンのことを かんがえているときの きもちは、きらきら ひかっていて、
 とても やわらかくて、すごく きれいなんですよ。
 
 じぶんでは よくわからない かもしれないし、
 めには みえないし、
 さわって たしかめることも できないけどね。
 
 でも、いま、キィさんは こころが なんだか あったかくて、
 やわらかい かんじが するでしょう?」
 
キィは ほんとうに そんなかんじが したので
 
「うん」
 
と こたえました。
 
 
「そのかんじが だいじなんです。
 でも、そのかんじが わからなくなってしまうひとも 
 たくさんいるんです。
 でも、キィさんは、パンのことを かんがえていれば、
 きっと だいじょうぶですよ」
 
ちいさいひとは にっこり わらいました。
 
「どうもありがとう。さようなら」
 
そういうと、ベンチをけって すこし くらくなりかけた、
ピンクいろのそらへとんでいきました。
 
 
 
 
つぎのひ おとうさんが キィの えを みて パンを やいてくれました。
 
「ちょうど くもみたいに ふわふわになる パンの つくりかたを 
 おもいついた ところだったんだよ」
 
キィは やきたての ゆうやけパンに ふうふう いきを ふきかけて、
ちょっと さましてから かじってみました。
 
ちょっぴりあまくて、ちょっぴりイチゴの あじが しました。
きのう、ゆうやけケーキを たべたときと おなじ、
とても たのしいきもちに なりました。
 
キィは おいしいパンのえを スケッチブックに たくさん 
かいてみようと おもいました。
 
 
(おわり)