エンジェルカードの物語

 
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◇ 第一幕 :若いお客 ◇
 
◇ 第二幕 :黒い紳士 ◇
 
◇ 第三幕 :職業婦人 ◇
 
◇ 第四幕 :歌い手 ◇
 
◇ 第五幕 :赤毛の若者 ◇
 
◇ 第六幕 :無名の画家 ◇
 
◇ 第七幕 :少年と緑の石 ◇
 
◇ 第八幕 :白詰草の首飾り ◇
 
 
 
 

◇ 第一幕 :若いお客 ◇

 
   
  
夜の帳(とばり)がおりる頃
けものが塒(ねぐら)へ急ぐ頃
 
突然この地に現れたのは
金の帽子に銀の服 光り輝くこのお方
その名も高きトレッサトッド 彼女はすべてをお見通し
 
まばゆい衣装に負けないくらい 大きな瞳に宿るのは
強い光と不思議な色彩 この眼はすべてをお見通し
 
生まれも育ちもわからない 何歳なのかもわからない
けれども彼女は知っている 彼女はすべてを知っている
 
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彼女が宙から取り出したのは テーブル一つに椅子二つ
彼女が座ったその時に 若いお客がやってきた
 
「あなたは何を知りたいの?」
「自分のことが知りたいの」
 
彼女の指が空を切る 現れたのは煌くカード
ふわりふわりと舞いながら トレッサトッドの手の中へ
 
「誰かの期待を期待しないで 自分で自分に願ってごらん
 
 一番自分が楽しめる 面白いこと好きなこと
 思う存分やってごらん 誰もなんにも言わないよ
 
 ただし絶対忘れちゃいけない
 あなたもみんなに許してね 自由に飛んで踊ること」
 
 
若いお客は茫然と 煌くカードを眺めてる
 
 
「自分が誰だか知ってるかい?
 ホントの自分を知ってるかい?
 
 明るい光が消えたのも 鉄条網で囲まれたのも
 あなたが自分でやったかも
 
 飛べる鳥さえ飛ばなくなる 泳げる魚がおぼれてる
  
 ホントの力はどこにある?
 あなたはちゃんとわかってる
 
 大きな力が届いてる あなたはそれを使えるよ
 大きな愛が届いてる あなたはそれを忘れてる
 
 強い翼を眠らせて あなたは何をお望みか?」
 
若いお客はうつむいて か細い指をからませた
 
「ゆっくり息をすってごらん そしたら息をはいてごらん
 もいちど息をすってごらん そしたら息をはいてごらん

 変わったことがわかるかい? 今の瞬間変わったことが
 
 あなたは何も気づかなくても 確かに変化は起こってる
 あなたの力が目覚めてく
 
 いらないものは流しなさい 流して場所を作りなさい
 
 ぽっかり空いたその場所に 新たな力が宿るから
 
 あるべきものがあるように
 やるべきことをやるように
 いるべき場所にいるように
 
 自然な流れを阻まなければ すべてはキレイに進んでく」
 
 
若いお客は頷いて わかりましたと呟いた
 
「私はあなたが見えるけど あなたは自分を見ていない
 
 外から入ってくるものを 追いかけまわすその前に
 まずは自分を御覧なさい 話をきいておあげなさい
 
 あせらなくても大丈夫 あなたは自分を取り戻す
 わからなくても大丈夫 正しい道に戻るから」
 
若いお客は立ち上がり、お礼を言って消え去った
 
 
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◇ 第二幕 :黒い紳士 ◇

  
 
若いお客が消えた後 闇の中からあらわれたのは
黒い帽子に黒い服 青い瞳のジェントルマン
 
「お目にかかれて光栄です」 彼は静かにほほえんだ

「お座り下さい この席に」 紳士は小さく頷いた
 
 
「厳しい今の状況を 抜け出す術(すべ)はありますか?」
 
煌くカードを並べてく トレッサトッドの白い指
 
「貴方は大変お忙しい 毎日毎日忙しい」
 
「確かにおっしゃる通りです 眠る暇さえ惜しいのです」
 
「だからなんにも聞こえない 自分の声さえ聞こえない
 ほんの少しの間でも 聞くべき声をお聞きなさい
 いつも貴方のそばにいて 守ってくれる内なる声を」
 
「私を守っているならば なぜこうなっているのです?」
 
「あなたが声を聞かないで どんどん走っていくからよ
 
 まずは食事を変えなさい 身体によいものお食べなさい
 心配したって変わらない 少しはゆっくり眠りなさい
 手紙を書くのはやめにして 毎日外を歩きなさい」
 
「そんなことをしていたら 先を越されてしまいます」
 
「もしもあなたが今のまま 走り続けていくならば
 富と名誉を手にしても それを楽しむ肉体は
 すぐに滅びてしまうでしょう」
 
紳士は急にうろたえて 宙に視線を泳がせた
 
「私はいったいどうしたら 静かに暮らしていけるでしょう?
 もう走れないと思っても 止まることさえ許されない」
 
「全てはあなたが決めること 止まりたかったら止まりなさい
 走りたかったら走りなさい 他人の許可はいらないわ」
 
「できることなら もうやめたい
 けれどとっても怖いのです 今いる場所から抜けるのが」
 
「あなたは声を聞けるはず 見えない光が見えるはず
 あなたを助ける存在が やってくるのがわかるはず」
 
トレッサトッドは眼を伏せて 聖なる呪文を呟いた
彼女の細い指先に 白い炎が揺れていた
彼女は椅子から立ち上がり 紳士の額を指差した
すると炎は筋になり 彼の額を貫いた
 
「汝の力を思い出せ 汝の力を取り戻せ」
 
紳士は身体をこわばらせ トレッサトッドを見上げていたが
やがて大きく息を吐き ほんの少しほほえんだ
 
「私の記憶の奥底に 深く沈み込んでいた 白い光が見えました」
 
「その光こそ貴方の力 これからそれを使いなさい
 貴方は言葉を受け取ります それをみんなに伝えなさい」
 
「言葉はどこから来るのでしょう? 私はそれを受け取れますか?」
 
「貴方が今の暮らしを変え 自分自身を敬うなら
 必ず言葉を受け取れます」
 
 
紳士の青い瞳には 不思議な色が添えられた
 
「多くの人が待ってます 貴方の言葉が力になる」
 
紳士はゆっくり立ち上がり 帽子を取ってお辞儀した
「偉大な力に感謝します」
 
トレッサトッドがほほえむと 紳士は静かに立ち去った
 
 
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◇ 第三幕 :職業婦人 ◇

 
黒い紳士が去った後 闇の中からあらわれたのは
重いカバンと商品見本 辞書とノートを両手に持った
ちょっと疲れた職業婦人
 
「ここに座っていいかしら?」
「どうぞどうぞ お座り下さい」
 
「私はとっても疲れているの」
「そうでしょうね」とトレッサトッド
 
「あなたは何でもわかっているの?」
「わかっていると 言われています」
  
職業婦人はクスリと笑い「私のことを聞きたいわ」
 
煌くカードが宙を舞い トレッサトッドの手の中へ
 
「最近月を見ましたか? 夜空にかかる輝く月を」
「そんなものもあったわね 私は長らく忘れていたわ
 月と私の仕事とは 全く関係ないからね」
 
「そんなことはありませぬ
 貴女の仕事のみならず 貴女自身も月の影
 月のリズムで生きています」
 
「私はそんなの感じない 私は勝手に生きてるわ」
 
「貴女の仕事も生活も 緩むことない弦のよう
 どんな時でも張りつめて 強くはじけば切れるかも」
 
「私はすべてを管理する 私の仕事は重要よ
 だから手抜きは許されない 気を抜くことは御法度よ」
 
「それが貴女をむしばむの 
 貴女の疲れの原因は 自分に対する厳しさよ
 肩から胸が痛むのは 自分に許可を出せないから」
 
「どうして貴女はわかるのですか?
 私は何も言ってない 貴女は私に触れてない」
 
「貴女の身体の周りには 悲しい影が揺れている
 貴女の心の奥底に さびしい気持ちが眠ってる」
 
「私はひとりで大丈夫 ひとりでちゃんと生きられる
 お金も家も宝石も 私は自力で手に入れた
 誰にもなんにも頼らずに 私はうまくやってきた」
 
「それは確かにそうですね しかし貴女はご満足?
 毎日 朝が辛くても 眠れぬ夜が続いても
 痛みをこらえて客に会い だしぬかれぬよう気を張って
 食事もろくに味わえない そんな生活 好きですか?」
 
「好きかどうかはわからない 楽しくないのは確かだわ」
 
「家もお金も宝石も 十分持っているならば
 そろそろ仕事はやめにして 楽しい暮らしはいかがでしょう?」
 
「そんなことを言ったって どうしていいかわからない
 仕事をしない生活を 想像するのは難しい」
 
「社交の運が開けるわ だから少しは出かけましょう
 誰かに会いに行きましょう」
 
「私に会いたいひとなんて 取引先しかいないわよ」
 
「それは貴女の思い込み 出かけてみればわかります
 すぐにやるのが辛いなら 気持ちを文字にしてみましょう
 ノートにいろいろ書きましょう」
 
「文字を書くのも仕事の一つ 嫌になるほど書いてたわ
 どれほど書いたかわからない」
 
「貴女が書いてきたことは 指示や依頼や注文書
 何を何個買い入れて それらをどこに届けるか
 いついつまでに荷造りし それらを誰が運ぶのか
 そういう手紙を何年も 書いてきたのじゃありません?」
 
「貴女は何でもわかるのね」
 
「気持ちを文字にしてください まずは自分を知ることよ
 頭に浮かぶ考えを どんどんノートに書いてみて」
 
「書けば痛みは消えますか?」
 
「自分に優しくなれればね 自分に手紙を書いてみて
 優しい言葉を並べてね」
 
「ノートを買って帰ります とっても綺麗な特別なのを」
 
婦人はにっこり微笑むと、足取り軽く立ち去った
 
 
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◇ 第四幕 :歌い手 ◇

 
婦人に続いてあらわれたのは 哀しい目をした若いひと
 
「お座りなさい」と言われても なかなか椅子に座れない
「立って話すの好きかしら?」
トレッサトッドが立とうとすると あわてて椅子に腰かけた
  
「どうしていいかわかりません」
「そういう時期も あるものよ」
「これでは前に進めません」
「進まなくてもいいじゃない」
「でもこの状態は 嫌なんです」
「だったら何とかしなくちゃね」
 
トレッサトッドはカードを並べ かすかな声で呟いた
「全ては自分次第なの」
 
相手はちょっと不満そう
 
「あなたの心が思うまま あなたの心が源泉よ」
「私はこんなの望んでない」
「そう言う人は多いわね」
 
「誰も私を見てくれない 私の歌を求めない」
 
「誰かがあなたを見てくれて あなたの歌を求めれば
 それであなたは満足かしら?
 
 何かの力が働いて 
 今のあなたが大勢の 視線を浴びればご満足?
 
 そういうことも できるわよ
 あなたがそうしてほしいなら
 
 ただしこれだけ覚えてて 魔法は魔法よ いつかは解ける 
 あなたの力が見せかけならば 光はすぐに消えうせる」
 
相手は言葉を失った
トレッサトッドは微笑んだ
 
「どうしてあなたは歌っているの?」
「私の心が望むから」
 
「だったら他人の称賛は あってもなくても同じでしょ
 求められなきゃ歌わない? 一人きりなら歌わない?」
 
「そんなことはありません」
 
「だったら歌えばいいじゃない
 今のあなたに足りないものは 本気の覚悟と情熱よ
 光が自分に当たるのを 待っていたってダメなのよ
 あなた自身が輝けば 光は自然に集まるわ
 
 あなたが歌を歌うのは
 心がそれを望むから 何度も何度も望むから
 歌えば心が満たされる 歌えば気持ちが軽くなる
 
 
 心の奥から湧いてくる 熱い想いを消さないで
 それときちんと向き合えば 周りのことは気にならない」
 
  
「歌への気持ちは消えないけれど 私はとっても寂しいの 
 一人で歌うと哀しいの
 ほめられたいとは思わない ただただ聞いててほしいだけ」
 
「月はあなたの友達よ 月と一緒に歌いなさい
 月の満ち欠け 心の変化 じっと見つめてごらんなさい
 きっといろいろわかるわよ
 月と一緒に詩を書けば 素敵な歌が作れるわ」
 
「今夜はキレイな満月ね 一曲歌ってよろしいですか?」
 
トレッサトッドが頷くと、若い歌い手は立ち上がり
月を見上げて歌いだす
 
「あなたの歌は本物ね でも期が熟すまで待ちましょう
 月と一緒に歌っていれば 必ず道が開けるわ」
 
「聞いててくれてありがとう 月と仲良くしていきます」
 
若い歌い手は一礼し 踊るような足取りで 闇の中へと立ち去った
 

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◇ 第五幕 :赤毛の若者 ◇

 
若い歌い手が去った後 闇からふらりとあらわれたのは
赤い巻き毛の若者だった
 
「貴女が魔女のトレッサトッド?」
 
「私は魔女ではありません」
 
「全てを自由に操れるのは 貴女だけだと伺いました」
 
「それはちょっと違うわね
 誰でも自由に操れるのよ 自分自身のシナリオは」
 
「そんな風には思えませんが」
 
「おかけなさいな」とトレッサトッド
 
赤い巻き毛の若者は 一礼してから腰掛けた
 
 
 
「どうにもならない条件は この世の中にはありますよ」
 
「例えばどんな条件かしら?」
 
「自分の親は選べませんし 生まれる家も選べません」
 
「どうしてそれが気になるの?」
 
「それが私の問題だから」
 
「ではどうなったら嬉しいの?」
 
赤い巻き毛の若者は ちょっと困って黙り込む
 
トレッサトッドはカードを並べ「なるほどねぇ」と呟いた
 
「ここから何がわかるのですか?」
 
「数え切れないくらいある あなたの未来の一つのヴィジョン」
 
「それはどういうことですか?」
 
「糸はあなたが持ってるの」
 
「糸とは何のことでしょう?」
 
「マリオネットはご存知ね?
 糸を引いたら手が上がり、糸をおろせば手はおりる
 あんな感じの糸のこと」
 
「それを私が持っている?」
 
「もちろんそうよ」とトレッサトッド
 
「もしもそうではないならば どなたが糸を操るの?
 あなた自身の人生を 誰か他人に操らせるの?」
 
「そんなことは嫌ですが 自分じゃどうにもならないことも
 かなりたくさん ありますよ」
 
「そう信じればそうなるわ
 自分じゃどうにもならないことを 誰か他人に任せておいて
 あなたはそれで平気なの?」
 
「わかってる人たちに聞くならば 安心しててもいいでしょう?
 彼らは僕より知っている たくさん知識を持っている」
 
「そうね そうとも言えるわね けれども彼らは知らないわ
 あなたがどういう人なのか 何を本気で望んでいるか」
 
「貴女だったらわかるはず 私のことも 未来のことも」
 
「先程お伝えしました通り 私が見るのは一つのヴィジョン
 数え切れないくらいある あなたの未来の一部だけ
 そうなることもありうるし ならないこともありうるわ」
 
「ならばそれを お聞かせ下さい」
 
「あなたの場合はどうかしら 聞かないほうがいいのかも
 だってあなたは本当は 未来なんかに興味ない」
 
赤い巻き毛の若者は 息をのんで黙り込む
 
「今のあなたが欲しいのは、あなたを定義する言葉
 自分以外の存在に とにかく決めて欲しいだけ
 
 <お前はこういう人間だ こういう風に生きなさい>
 
 けれどもあなたは知っている どうしたいのかわかってる
 だけど怖くて仕方ない
 
 失敗したらどうしよう 失敗したら笑われる
 
 もっと自分を信じなさい 内なる力を信じなさい
 自分のために生きなさい
 
 今のあなたに必要なのは 考え方を変えること
 
 やらされてると思うから 楽しい気持ちが消えるのよ
 無理矢理レールに乗せられたなんて そんな考え捨てなさい」
 
「私の道は一つだけ 一つだけしかありえない」
 
「ありえないのなら そうなるわ 決めたとおりになるものよ
 変えるつもりがないならば 不平不満はやめなさい
 
 どんな種類の占い師でも 決定権は持てないわ
 全てを決める権限は 本人だけが持てるのよ
 
 占いの結果や忠告を 聞いた後の行動は
 本人だけしか決められない それが未来を作るのよ
 今のあなたの行動が 未来のあなたを作っているの
 
 
 この世はあなたの鏡像よ
 あなたが笑えば 世界も笑う
 あなたが怒れば 世界も怒る
 
 そういうふうに なってるの」
 
 
赤い巻き毛の若者は こぼれた涙を手の甲で
ぐいっと強くふき取った
 
「あなたを愛する存在が あらゆる場所から応援してる
 あなたにパワーを送っているわ
 
 あなたが自分で道を決め 自力で進んでいくならば
 私も応援いたします」
 
赤い巻き毛の若者は もう一度両手で目を拭いた 
 
「嬉しい言葉をありがとう まだまだ受け取れ切れないけれど
 嫌な気持ちは消えました
 
 これから親と話します 自分の気持ちを話してみます
 トレッサトッド 貴女とは 近い未来に会えますね?」 

トレッサトッドが頷くと 赤い巻き毛の若者は ニッコリ笑って立ち去った 
 
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◇ 第六幕 :無名の画家 ◇

 
赤い巻き毛の若者が 去って行ったすぐ後に
闇の中からあらわれたのは 銀の眼をした無名の画家
 
「貴女が名高きトレッサトッド? 貴女にお会いしたかった」
「どうぞこちらにおかけください」
 
銀の瞳を輝かせ 無名の画家は腰かけた
「貴女にお見せしたかった 私がえがいた花の絵を」
画家は大きな鞄を開けて スケッチブックを取り出した
 
「心に響く 素敵な絵 なぜ人前に出さないの?」
 
「個展の夢はあるけれど お金が全くないのです
 妻が支えてくれますが 生活するのが精一杯
 私も仕事をしています 絵とは関係ないけどね
 ホントはもっと働きたいが 妻が反対するのです
 絵を描く時間が減るからと」
 
「なんて優しい奥様でしょう あなたはとてもラッキーね」
 
「妻には頭が上がりません
 私自身はラッキーですが 彼女は苦労が絶えないかも
 指輪の一つもあげられない」
 
「けれどあなたの奥様は あなたを責めたりしないでしょ?
 もっと描いてと言うでしょう?」
 
「どうしてそれがわかるんです?」
「あなたを見れば わかります あなたの描く絵も 教えてくれる」
 
トレッサトッドの白い手が スケッチブックを持ち上げた
すると輝く光の帯が 画家の胸までつながった
 
 
「あなたの描いた花の絵は あなたの心が咲かせたの
 だからあなたの奥様は あなたの心を守っているの
 彼女は花が好きなのよ あなたがえがいた花の絵が」
 
トレッサトッドはカードを並べ 画家の眼を見て呟いた
 
「あなたのその眼は力があるわ 見えないものが見えるわね
 あなたはいつから 描いてるの?」
 
「ずっとずっと昔から 3,4歳の頃からです」
 
「誰かに描き方 教わった?」
 
「花が教えてくれました」
 
「だからあなたのえがく絵は とても印象的なのね
 それをみんなに 教えたら?」
 
「絵の学校を出てないし 絵の先生にも師事してない だから私は資格がない」
 
「絵を教えるのに資格がいるの?」
 
「そういうわけではないけれど 卒業証書や推薦状が 全くないのは不安です」
 
「子どもを集めて教えてみたら?
 彼らにとって重要なのは 面白いかと楽しいか
 肩書きなどは通用しない あなたはきっとできるわよ
 
 お花があなたに教えたことを あなたは子どもに教えてね
 きっと彼らは驚くほどの すばらしい絵を描くでしょう
 お花はもっと教えてくれる だから全てを 伝えてね」
 
「子どものことは 大好きです 楽しそうだな やってみます」
 
「あなたの銀の瞳には いろんなものが映ってる
 あなたは理性が強いけど 直観力も高いのよ
 
 パッと思いついたこと 加工しないで受け取って
 ふと思ったこと感じること もっと尊重してください
 心の声をよく聞いて バカげたことだと思わずに
 そういう種類のひらめきが 必ずチャンスを運んでくる」
 
「私はこの眼が嫌でした 気味が悪いと言われたことも
 余計なものが見えるのが 悲しくなるほど嫌でした」
 
「あなたの素敵な奥様は 銀の瞳も大好きね」
 
画家はちょっとはにかんで 困った顔してうつむいた
 
「あなたの描く絵は本物よ 自信を持って大丈夫
 時期が来れば絶対に あなたのえがいた花の絵は
 高い評価を受けるでしょう
 
 それまでいろいろあるけれど 自分のことを責めないで
 あなたの心をふんわりと 優しいままにしておいて
 あなたの素敵な奥様も それを望んでいるはずよ
 心を明るく保ったままで 子どもたちに教えてね
 あなた自身も学んでいって お花と会話を楽しんで
 
 あなたと周りの人たちに 優しい気持ちを向けながら
 いつか輝く日のために 毎日準備をしていって
 必ず花が咲きますよ」
 
画家は顔を上気させ 嬉しそうに微笑んだ
「今夜の貴女のお話を 妻にも早く伝えたい
 今度お会いする時は 彼女も一緒にお話ししたい」
 
「そうね私も奥様と 一度お話ししてみたい」
 
「妻はきっと喜びます 今夜はどうもありがとう」
銀の瞳の無名の画家は スケッチブックをパラパラめくり
一枚の絵をさしだした
 
「貴女に似てると思います ほんのお礼の気持ちです」
「嬉しい どうもありがとう 私はこんな感じなの?」
 
トレッサトッドは絵を眺め 「大事にします」と呟いた
画家は椅子から立ち上がり 闇の中へと消えてった
 
 
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◇ 第七幕 :少年と緑の石 ◇

 
無名の画家が去った後 闇の中からあらわれたのは
暗い眼をした少年だった
 
「貴女の話を聞いてから 会ってみたいと思ってました
 今日はとっても嬉しいです」
 
「それは大変光栄だけど あなたの瞳は悲しそう
 とにかくそこに 座りなさいな」
 
トレッサトッドが取り出した 煌くカードがきれいに並ぶ
暗い眼をした少年は 「生きてるみたい」と呟いた
 
「そうよカードは生きてるわ いろんなことを教えてくれる
 今のあなたが知りたいことは いったいどんなことかしら?」
 
「なんだか全てが嫌なのです 何をやっても中くらい
 全然ダメならあきらめられる とってもできればヤル気になる
 だけど何でも中くらい 怒られないけど褒められない」
 
「あなたの基準は何なのかしら?
 いいとか悪い・中くらい 何と比べて決まるのかしら?」
 
「テストの点とか評価とか きっちり順位をつけられます」
 
「そういう尺度もあったわね それが全てじゃないけれど 
 あなたくらいの年頃なら それが全てになるかもね
 
 あなたの場合 自分でも いろいろ条件つけてるの
 だから哀しくなるのでしょう」
 
暗い眼をした少年はトレッサトッドの視線を避けた
 
「あなたがつけてる条件は 自分のきょうだいとの比較
 年の離れた兄・姉を 尊敬しつつも羨んでる」
 
「だってそれは避けられない 彼らはとっても優秀だから」
 
「あなたももちろん優秀よ あなたの道においてはね
 彼らの特技とあなたの特技 それらは全然違うのよ」
 
「僕には誇れる才能も すごい特技も能力も 
 目立つ力は何もない」
 
「それではお教えいたしましょ
 もっともあなたはまだ若い どんな力も伸ばせるわ
 
 多くの力が眠ってる 目覚めるときを待っている
 あなたがそれに気づかずに 他人ばかりを見ていたら
 眠れる力は眠ったままよ このことだけは覚えてて
 自分自身を見ないでいたら どんなにすごい才能も
 日の目を見ないで埋もれたまま
 まずは自分で見いだすことよ それが最初のステップよ
 
 あなたの中に眠っている 大きな力の一つには
 『子どもと関わること』がある
 
 あなたは小さい妹と 家族の中の誰よりも 上手に遊び 喜ばせてる」
 
 「それが何だというのです?」
 
「あなたの小さい妹は ガラスの心を持っている
 独自の世界を持っている
 それを守ってあげるのは そう簡単にはできないの
 あなただから できるのよ
 
 もっとも今のあなたには どれだけすごいかわからない
 あなたくらいの年頃なら 違う力が欲しいでしょ?
 もっと他人に誇れるような とってもわかりやすいもの
 もちろんそれも 悪くない 今なら何でも身につくわ
 
 あなたはいつでも守られてる
 大きな力が支えてくれる
 だから心が導くままに やりたいことをやってごらん
 兄や姉との比較でなく 彼らの基準を持ち込まず
 自分自身に誇れるもの
 がんばったなと思えるもの
 やってて苦しくないものを 
 いろいろ試してみてごらん
 
 あなたは自分を認めないけど 教える力も持ってるの
 新たな世界に触れてみて 感じたことを伝えてごらん
 何かを思いついたなら すぐに忘れてしまわずに
 誰かに話してみてごらん
 
 まずは小さな妹に 話を聞いてもらってね
 彼女はきっと喜ぶわ 
 こういう風に少しずつ 身近な人から少しずつ
 伝えることを試してごらん
 
 光を浴びる人たちの 影に隠れていることを
 誰も強制していない
 
 あなたはあなたの道がある
 そこを歩いている限り 光はあなたとともにある
 
 他の人との比較はせずに 自分の道だけ見つめてて
 
 
 あなたにこれを差し上げます
 時々これを手に乗せて 自分の道をイメージしてね」
 
 トレッサトッドの白い手が 闇をふわりと掬い取る
 やわらかそうな手のひらに 光り輝く緑の石
 
 びっくりしている少年に トレッサトッドは微笑みかけた
 
「あなたの瞳は本当は こういう光を宿しているの
 もっと笑ってごらんなさい あなたはまだまだ若いのだから
 楽しいことを考えて 楽しい時間を過ごしなさい」
 
「ホントに僕の眼の色ですか?」 
 
「あなたが笑っているときは こういう眼をしているはずなのよ
 
 あなたの小さな妹と もっと遊んでごらんなさい
 彼女はあなたの心の中に 楽しい風を吹き込むわ」
 
「あの子と遊んでいるだけで 何か変化が起こるのですか?」
 
「辛いことを乗り越える それも一つの道だけど
 楽しいことを楽しむことも 変化をもたらす方法よ」
 
それを聞いた少年は 彼の手にある石を見て ちょっと困った顔をした
 
「あなたの瞳が輝いてれば 道は開けていくものよ」
 
「わかりました」と少年は 小さな声で応えると
ふうっと溜息ひとつつき 緑の石をしっかりと 両手で固く握ってた
 
「いろいろどうもありがとう なんとなくしかわからないけど
 変化が起こる気がします
 
 あの子と毎日たくさん遊び 笑えるようになりたいです」
 
「心配しなくて大丈夫 あなただったら大丈夫」
 
椅子から立った少年は ゆっくり深くお辞儀をし 闇の中へと立ち去った
 
 
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◇ 第八幕 :白詰草の首飾り ◇

 
少年がいなくなった後 闇の中からあわられたのは
清楚な感じの きれいな少女
 
「こちらに座っていいですか?」
「どうぞどうぞ」とトレッサトッド
 
「先程貴女と話してたのは 一番下の弟です
 私が来るのを気付かずに 走って行ってしまったけれど
 あんなに明るく笑ってたのは 久しぶりだと思います」
 
トレッサトッドはにっこり笑い
「あなたの悩みは何でしょう?」
 
少女は困って視線を落とし 自分の指を見つめてた
「私はあの子がうらやましい」
彼女はぽつりと呟いた
 
「あの子の自由な生き方が 私はとてもうらやましい」
「あなたも自由に生きられる どうして彼がうらやましいの?」
「私は私と闘ってるの 毎回自分を超えないと 周囲は認めてくれないの」
「それはどういうことかしら?」
「私は出来て当たり前 できなかったらダメなんです
 いつもトップを期待され 実際トップになったとしても
 当たり前だとみなされる
 
 陰でどれだけあがいているか 誰も気づいてくれないの
 天才だからできるとか もともと頭がいいだとか
 どんなに努力していても 誰もわかってくれません」
 
 
大きな瞳に涙があふれ 白い頬を流れて落ちた
彼女は慌てて涙をぬぐい 急いで呼吸を整えた
 
 
「泣きたい時は 泣きなさい あなたは我慢しすぎだわ」
「私は泣くのが嫌いです
 泣いて涙でごまかすことは とてもずるいと思うから」
 
 
トレッサトッドはカードを並べ 少女の顔をじっと見た
「涙で自分は誤魔化せないわ
 泣きたい気持ちを抑える方が ずるいことだと思うけど
 
 今のあなたは繊細よ だから私に会いにきた
 いつもの賢いあなたなら 論理的なあなたなら
 私のところに来やしない」
 
「そうです私は信じない 占いだとか魔法とか」
 
「それはそれでOKよ 信じる必要なんかない
 
 自分の意志ではあるけれど 自分の意思ではないような
 不思議な思いに導かれ あなたはここに来たのよね」
 
少女は静かに頷いた
 
「これまでだって 同じこと 何度もあったはずなのよ
 なんだか不思議な気持ちになって
 やらなきゃ・行かなきゃと思っても
 気のせいだとか おかしいとか
 あなたはたいてい打ち消した
 
 それでも別にいいけれど だんだん辛くなってくわ
 心を無視してしまったら 体の元気がなくなるの
 
 あなたは小さな妹と 遊ぶことがあるかしら?」
 
 
「あの子は私が嫌いなの 近づくだけで嫌がるわ
 私もあの子が苦手なの 心を読まれているようで」 
 
 
「彼女は時々鏡になるの 近づく人を映し出す」
「私があの子を嫌ってるから あの子も私を嫌っているの?」
「ホントに嫌いじゃないでしょう?
 会話がなかなか進まない だから気まずく感じるだけ」
 
 
「一番下の弟は あの子ととっても仲良しよ 彼らはなんだか似ているわ」
「あなたも本当は似ているの 心を自由にするだけで いつでも彼らと遊べるわ」
「何して遊べばいいのでしょう?
 私は遊んでいないから 何していいか わからない
 ずっと勉強してきたの 役立つことを 学んだわ」
「役立つことってどんなこと?
 悲しい時にはどうしたら 心が軽くなるかしら?
 誰かと仲良くしたいとき あなたは何をしたらいい?」
「そういうことは 知らないけれど
 他のことなら知ってるわ 外国語だって話せるわ
 けれどそれらが本当に 私自身に幸せを 運んでくれるかわからない」
 
 
「あなたの心の奥底に ちいさいあなたが住んでます
 彼女はあなたの妹に 似ているところがあるかもね
 小さいあなたと遊んであげて 彼女は何をしたいのかしら?」
「そんなの私はわからない」
「何が欲しいと思うのかしら?
 あなたの勝手な想像で 構わないから言ってみて」
 
少女は目を閉じうつむいて しばらく考え込んでいた
 
「褒めてほしいと思います 白詰草の首飾り
 一生懸命作ったけれど 母は受け取らなかったわ
 もっと勉強しなさいと それだけ言って帰ったの
 
 白詰草の首飾り 誰ももらってくれないの
 
 母にもらってほしかったけど 今となってはもう遅い
 母は死んでしまったの」
 
彼女の伏せた睫毛から 涙がぽろぽろこぼれて落ちた
 
「古い記憶につながったのね 今はいいのよ泣きなさい
 あなたの心の悲しみを 涙と一緒に流しなさい」
 
少女は両手に顔を埋め 肩を震わせ泣き出した
 
 
トレッサトッドの白い手が 闇をふわりと包み込む
手と手の間に光が生まれ きらきら優しく輝いた
トレッサトッドのくちびるが 短い呪文を唱えると
光は綺麗な帯になり 少女の体を包み込み ふっと静かに消えてった
 
 
少女はゆっくり顔を上げ 涙を指で拭き取った
「私も同じことをした
 私の小さな妹が 私に渡した首飾り
 白詰草の首飾り 私は受け取れなかったの」
 
「あなたはとても優しい人ね
 自分自身に対しても もっと優しくなりなさい
 
 あしたあなたの妹と 一緒に出かけてもらえるかしら?
 白詰草の原っぱで 白詰草の首飾り
 あなたに作っていただきたいの
 それをあなたの妹に にっこり笑って渡してほしい
 
 彼女は必ず受け取るわ とても嬉しく思うはず
 あなたの心の中にいる 小さなあなたも笑うでしょう
 あなたの心の悲しみは 必ず消えるわ大丈夫」
 
「なんだかすっきりしたみたい
 自分のために泣くことは 気持ちを変えてくれるのね」
「泣きたい時は泣きなさい 我慢するのはよくないわ
 自分の心を尊重してね もっと優しくしてあげて」
 
少女は素直に頷いた
 
「だんだん気持ちが落ち着くわ 心が軽くなるでしょう
 そしたら夢を考えて あなたが本気で望む夢
 心の底から本当に 実現したいと思う夢
 周囲の期待 ではなくて あなた自身が望む夢
 それをハッキリえがいてね
 本気の夢なら必ず叶う
 望みが叶った嬉しさを 感じるくらいイメージして
 
 これまであなたは努力した それは必ず報われるから
 辛い気持を手放せず 心が沈んでしまったけれど
 これから先は大丈夫
 
 あなたの小さな妹と あなたの中のちいさなあなた
 二人と仲良くしてってね」
 
 
「ホントにどうもありがとう
 明日は必ず妹と 一緒に散歩に行ってきます
 白詰草の首飾り 彼女にちゃんと渡します」
 
トレッサトッドが頷くと 少女は明るい笑顔を見せて 闇の中へと立ち去った
 
 
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 ◇ 第一幕 ◇ 
Gentleness
Remember Who you are
Breath
 
 ◇ 第二幕 ◇
Comfort
Healthy lifestyle
Spiritual understanding
Take Back Your Power(J.C) 
Counselor(J.C)
 
 ◇ 第三幕 ◇
Moon Cycles
Beloved One
Creative Writing
 
 ◇ 第四幕 ◇
Passion
Clairsentience
Moon Cycles
 
 ◇ 第五幕 ◇
You Know What to Do
Career Transition
Hello from Heaven
  
 ◇ 第六幕 ◇
Teaching and Learning
Prosperity
Victory 
Compassion(J.C)
 
 ◇ 第七幕 ◇
Indigo and Crystal Children
You Are Safe
Teaching and Learning
 
 ◇ 第八幕 ◇
Sensitivity
Nurture
Crystal-Clear Intentions