あなたはだあれ


あなたはだあれ
松谷みよ子あかちゃんの本
瀬川 康男 (イラスト)
1968/01
 
瀬川氏の絵はとても落ち着いた雰囲気なので、小さい子が必ずしも好きになるとは限らないが、
私は好きだった。
 
何かのシルエットが小さな木橋の上に乗っている。
それに向かって、モンゴルの民族衣装(?)のような服装の男の子が
「あなたは、だあれ?」
と問いかけると、次のページに答えが出てくるというシンプルなお話。
 
いぬ、こやぎ、かえる、じどうしゃが出てくる。
(カエルと自動車はどうも「俺様」な性格らしい…)
 
正体がわかると、
どんどんばしわたって こっちへおいで
と、男の子が呼び寄せる。
 
この本の影響だと思うのだが、私は、
「ロンドン橋落ちた」(Longon Bridge is Falling Down)の歌を
どんどんばし おちた おちた おちた
と歌っていた。
 
 
あんなに水面に近い橋が落ちたところで、別にどうってことないのに
なんで「歌」になるんだろう??と考えたこともあった。
 
「あなたはだあれ」と「こっちへおいで」を繰り返す、
他愛のない話なのだが(子どもは繰り返しが好きだけど)、
最後に出てきた自動車にみんなで乗って、
どこかへでかけていくのが羨ましかった。
 
のった のった
みんなで のった
はしれ はしれ
ビュゥーン ブッブー
いきますよう
ブッブー
 
みんな、とても楽しそうで、
「のせてのせて」のラストに通じるものを感じていたのかもしれない。
 
息子はこの話が好きで、イヌのシルエットが出てきただけで
「わんわ!」と叫ぶ。
こやぎはわからないようだが、「めぇめぇめぇ」という箇所を読むとマネをして笑う。
 
この茶系の絵を見ていると、小さい頃、母が作ってくれたドレスを思い出す。
ドレスと言っても、太い筒型に縫った布にゴムを通しただけのもの。
(つまり、ウエストゴムのロングスカート)
それでもくるぶしまで届く丈と広がった裾が、「お姫様気分」にさせてくれた。
 
黄緑と黄色の葉っぱのような模様の明るい色の柔らかい生地のドレスと
ベージュの地に茶色っぽい壷が描いてある、
しっかりした生地のドレスと2種類あった。(各2着ずつで計4着)
 
壷のドレスの雰囲気が「あなたはだあれ」の絵の雰囲気によく似ているのだ。
 
幼馴染はこのドレスのことを覚えていた。
「ひらひらした黄緑っぽいドレスはお姉ちゃんたちに取られちゃってたよねー」
姉や近所の年上の女の子達もこのドレスを着て遊んでいた。
「今考えると、あの地味な生地の方が素敵だったよね。」
私もそう思う。
 
 
母が笑いながら話してくれた思い出話がある。
 
母が近所のお豆腐屋さんに買い物に行こうとした時、私と妹に
「一緒に来る?」
と、聞いたのだが、遊びに夢中になっていて
「いかない」
と答えたそうだ。
 
近所だし、すぐ戻るし、ということで、母は一人で出かけた。
お豆腐を買って戻ってくると、家の前の道路に待ちきれなくなった私と妹が立っていた。
ひらひらのドレスを着て、海に行ったときに買ってもらった貝のネックレスやら
プラスチックの真珠もどきのネックレスやら
じゃらじゃらしたビーズの巨大なペンダントやら
ありったけの首飾りをぶらさげて、手首にもいろんなものをくっつけて
髪にも「パチン留め」の造花の飾りをつけて、まさに「満艦飾」で立っていた。
 
 
母はその様子がとても可笑しくて、とても可愛いと思ったらしい。
 
そんな思い出があるからこそ、娘が生意気なことを言ったり、
激しく反抗してみても「満艦飾の小さな女の子」が
一生懸命強がっているようにしか見えなくて、平然としていられたのかもしれない。
 
 
もちろん、母が応戦してくることもあったが、心のどこかで「敵わない」とわかっていた。
 
それが悔しくて、悔しくて、さらに激しく抵抗していた。
 
 
息子はどういうカタチで反抗するのかな…
高校生くらいまでなら「敵わない」って思ってくれるかな?
 
 
 
 
 
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